4. 隣の席の先輩はとっても可愛い

第26話

 午前5時。目が覚める。眠たい目をこすりそうになるけどぐっと我慢。こすると目の皮膚にダメージを与えてしまうから、絶対こすっちゃダメなのだ。


 お布団の中でぐーっと伸びをしながら3分間のストレッチ。友達がおすすめしてたからやってるけど、本当に効果があるのかは疑問だ。


 いい感じに体温を上げたところで、起き上がって顔を洗う。化粧水と乳液はたっぷり。スキンケアには手間をかける主義だけど、デパコスとかには手を出せないから、ネットの口コミを見て、安いなかでも評判の良いものを使っている。


 いつものように、ばっちりお化粧をしたら、温めておいたコテで髪を巻いて、準備完了。


 昨日の夜にちゃんと作っておいたお弁当を冷蔵庫から出して、保冷剤と一緒にカバンに入れて、家を出た。



 満員電車に耐えながらなんとか会社のビルに到着すると、エレベーターのところでチームリーダーの川島さんと鉢合わせた。


「おはようございます~!」

「円城寺さん、おはようございます。今日はずいぶん早いね」

「一応新年度なので、気合いを入れてみました!」


 そう、今日は新年度の一日目。

 今日からは今までとは違うお仕事を任されると聞いて、わたしはやる気に燃えていた。

 

 転職してから約一年。最初の半年の試用期間だけはなんとか誤魔化し誤魔化し、切り抜けはしたけれど、いつもミスをしてばかりのわたしは、いまだに会社のお荷物だった。さすがに、それくらいのことはわかっている。


「大変な仕事だと思うけど、無理しすぎないようね」


 川島さんはそう言ってくれるけれど、へっぽこなわたしには、ちょっと無理をするくらいでないと務まらないと思う。


 なにより、わたしは、一刻も早く彼女の役に立ちたいんだ。


「山本さん! おはようございます!」

「あ、円城寺さん。おはようございます」


 オフィスに到着して、最初に目が合ったのがその人。わたしの一年先輩の、山本さん。


 とっても面倒見がよくて、いつもミスをしてばかりのわたしを、優しくフォローしてくれる。実はわたしと同じ年の二十六歳らしいんだけど、とてもそうは見えないくらいしっかりして、落ち着いている。


 わたしにはなんだかわからないけど、プログラミング? みたいな難しそうな仕事をしているし。頭がよくって、カッコよくて、とても素敵な人なのだ。


 それに、何より。とっても、可愛い。


 一度も染めたことがなさそうな、艶々した綺麗なロングの黒髪に、ファンデーションなんていらなそうな綺麗な色白の肌に。それから黒縁眼鏡の下のおめめは、実はぱっちり二重でまつ毛バサバサなのだ。


 きっと自前のまつ毛なんだろうな、羨ましい。ちなみにわたしのはまつエク。かさ増し上等。


 学生時代とか前の職場では、こういう清楚系の女の人はあまり見なかったから、単に珍しいというのもあるけど。


 ピュアな女の子って感じの外見と裏腹に、妙にクールというか、サバサバしてるとか男前とかってほどでもないけど、周りに流されない感じの、一匹狼な雰囲気もあって。そのギャップに、ついキュンキュンしてしまうのは仕方ないんじゃないかと思う。


 ……あれ、わたしだけ? まあ、いいや。


 とりあえず今日からわたしは、そんな素敵な山本さんの専属アシスタントになったのだった。


「じゃあ早速だけど、簡単に説明するね」


 朝礼が終わって、山本さんがわたしの席に寄ってくる。


 お仕事、スタート。さあ、今日もがんばるぞー!


 わたしはやる気に燃えるのだった。

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