消えゆく街の本屋

月乃兎姫

第1話

 いつの頃だっただろうか、街にある本屋へと足を運ばなくなってしまったのは?

 きっとそれは昨今のスマホの台頭及びネット普及による影響であろう……とは誰もが口にすることだろう。しかし、本当にそれだけなのだろうか? かくゆう、私もそうした疑問を持ちつつも、本屋に足が向かなくなった一人である。


 ネットによるウェブ小説やECサイトなどによるネット販売、それに付随する形で電子書籍の影響もあるかもしれない。それでも私は紙媒体も好む傾向があり、また一定数ではあるが、そうした人々も稀な存在ではないはずだ。


 ならば、街にある小さな本屋が年々その数を減らしているのは、他の要因もあるのではないか? 一つは欲しい本や近くの本屋で売っていないこと。これは誰しも一度は経験と思われる。


 だからこそネット検索で探し、そのまま購入することが少なくない。また本というのは一口に言っても、価格が定価でしか存在しない。当然、中古本は含まれないのだが、こうしたことも本屋が衰退する原因の一つだと思える。


 仮に新刊で人気がある作品であろうとも、わざわざ本屋へと出向き探すのも一苦労。まるで迷路のような本棚と無数の本の中からお目当てのものを探すのは、今現在ネットを使う人にとっては苦痛なのかもしれない。しかし宛ても無く、ただ街にある本屋へとフラッと立ち寄り、未だ見知らぬ本と出会うのも、本好きにとってみれば醍醐味の一つではなかろうか?


 そうした無駄とも思えるものをこそぎ落とし、効率や楽さ、また便利や安さを求めた結果、街の本屋だけに限らず出版業界そのものが衰退の一途を辿っている。ウェブ小説でありながら、こうした物事を書いている時点で矛盾ではあるが、世の中は創作物のように合理的かつ理性的でも、また矛盾無きものではないのだ。


 矛盾、非効率性、そうしたものが現代における社会、主に出版業界に問われていることだろう。

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