番外編 思い出

春乃と孝司は春乃の部屋で喋っていた。

「思い出したんだけどさぁ」

「何?」

「幼稚園の時に、初めて春乃に遊ぼうって誘った時の事」 

「あれはびっくりしたな…」

「そう?」

「幼稚園で初めて話しかけてくれたのが孝司だったから」

「そっか」

「うん。で?何を思い出したの?」

「話しかける時、めちゃくちゃドキドキしてたなって」

「え」

「いや、怖かったのもあるんだけど」

「怖かったんかい」

「よくよく見たら可愛いし、照れちゃって」

「そうなの?」

「うん。結構、話しかけるかどうか迷ってた」

「そうなんだ」

「思いきって話しかけたらさ、結構やなやつで…」

春乃は孝司をポカポカ叩いた。

「ごめんって」

「どうせ私はクラスの嫌われ者ですよ」

「あー…、なんかね。怖がられてたよね」

春乃はまた孝司を叩いた。

「そんな事、思い出さないでよ」

「いや、そう思ってたんだけど、運動もできたし、何でもうまく作ったりしてさ、すごいなって思って」

「……」

「ちょっと憧れみたいなね。気持ちもあったなって」

「…今更褒めても遅い…」

「…怒んないでよ」

「怒るよ」

「あっ、あとさ、」

「話続けるんかい」

「よく遊んでたヒロトいたじゃん?」

「うん」

「あいつがさ、春乃が好きって言い出して」

「そうなの?めっちゃ嫌な事されてたけど…」

「そうなんだけど、よく好きって言ってたよ」

「ふーん」

「でさ、俺、春乃と仲良かったからさ、目の敵にされて」

「へー」

「あんまりにも突っかかってくるから、ムカついて、春乃は俺の事が好きなんだって嘘ついちゃって」

「…ま、間違っては無い…」

「それから、春乃の事、意識しちゃって全然話せなかったんだよね」

「意識してたの?」

「うん。思いっきり」

「なんで意識するのやめたの?」

「え?…」

孝司は黙った。

「…」

「何か言えよ」

「忘れた…」

「…私、知ってるぞ」

「…」

「孝司、幼稚園の時ミカちゃんの事好きって言ってたよね…?」

「…」

「本命ができたから、私の事どうでも良くなったんでしょ…」

「…」

「ほらっ!」

「…」

春乃はふんっとそっぽを向いてしまった。


「あー…、なんでこんな事思い出しちゃったんだろ…」

「こっちのセリフだよ」

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幼馴染の恋 15歳 エピソード1 Nobuyuki @tutiyanobuyuki

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