ハグしていいの?  

次の日、孝司と春乃は、佐和に付き合うことになった事を報告した。


「わ~、良かったね〜」

佐和の目は潤んでいた。

「うん、佐和が教えてくれたから…」

「!ちょっと、それ…」

佐和は、シーっのポーズをした。

「何?」

孝司は聞いた。

「あのね、孝司が、私の事とっくにに好きだって」

孝司の顔がみるみる赤くなる。

「何を教えてるんだよ…」

孝司は佐和を睨んだ。


「いや、だって…。恋愛レベル1の子、はっきり言わないとさ、気づかないんだもん」

「…でも、確証のないことを…」

孝司が言った事に、佐和は目を丸くした。

「あんた、バレバレだから」

「え?」

「だから、春乃の周りの男が引いてったんじゃん」

「え、あれ付き合ってるフリだったんだけど…」

「恋愛レベル2…」

孝司に向かって言った。

「そんな低くねーわ」

「…」

佐和は本当の苦笑いをした。



その日の、帰り道。

「ね」

「うん?」

「手」

「うん」

春乃は手を握った。

「恋人繋ぎする?」

「…うん」

孝司は、指を絡ませた。


「やっぱり…ドキドキする」

春乃が顔を赤くして、微笑んだ。

「…可愛いこと言わない」

「?」

春乃は孝司の顔を見た。

「こっち見ない」

「なんで?」

「春乃のその顔、爆発力が…半端ない…」

孝司は、赤くなっている顔を片手で隠した。

春乃はそれを見て笑った。

孝司は、ムカついて手をきつく握った。

「痛っ!」

春乃は、孝司を睨んで、強めにパンチした。

「いってぇ」

2人で、笑いながら帰った。


「あー楽し。昨日までが嘘のようだー」

春乃は、伸びをしながら言った。

「そうだね…」

ちょっとバツの悪そうな顔の孝司。

「…ごめんね」

春乃が言った。

「?謝るのは、俺な気がするけど…」


「佐和にも言われた」

「…まだ、何かあるの?」

孝司は、また恥ずかしめを受けるのかと身構えた。


「恋愛レベル1だからって、それに慣れちゃだめだって。孝司が、どう思うかって、理解しようとしなきゃって…」

「…佐和ってすごいな…」


「晴人さんの事…」

「あのさ、」

「ん?」

「晴人さんって言うのやだ。先生とか、中山さんとかにして」

孝司は真面目に言った。

「…」

「ずっとやだった」


「ごめん」

「…」

「あと、モデルの仕事はしていいけど、って俺が許可することじゃ、無いけど」

「うん」

「俺の前で楽しそうに話さないで」

「うん」

「あと」

(まだ、何かあるんだ…。…。)

「俺、先生みたいに、何の取り柄も無いけどいいの?」

「?学年1位じゃん」

「それだけだもん」

孝司は少しいじけた。

「絵が描けたりとか?できないってこと?」「何か違う気がするけど…」

「孝司と一緒にいると面白いよ」

「…」

「先生といるより、100倍楽しいし、100倍嬉しい」

「100倍…?」

「うん。もっとかも」

「…何か…泣ける…」

「何でー?」

春乃は笑った。


「じゃ」

2人のいつもの別れ道に着いた。

「うん。あのさ…」

「ん?」

「付き合ってるってことはさ。これからさ、ハグとかしてもいいの?」

「いいよ」

「!…」

孝司はまたしても、春乃の爆発力にやられた。

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