恋人繋ぎは恥ずかしすぎる…

(春乃は付き合ってるフリで、いいんだ)

孝司は、理由はともあれ、告白したようなものだった。

だが、春乃は付き合っているフリでいいと言った。

孝司は春乃が求めてこない事に少し寂しさを感じた。


「付き合ってるふりってどうやればいいの?」

春乃が孝司に聞きいた。

「毎日一緒に帰る?」

「うん」


春乃はフリと言いながらも付き合えるんだと思うとワクワクした。

ニマニマしてる春乃を見て、孝司は笑った。

春乃は何かバレたと思って、アワアワしてしまった。

それを見て、孝司はまた笑った。

春乃は横目で睨んだ。


次の日から、孝司と春乃は一緒に帰ることにした。

(一緒に帰るだけで、春乃に言い寄る男子がいなくなるなら楽だな)


そう思ったが、もともと仲のいい二人だったので、思ったよりは効き目は無かった。


春乃は告白される人数は減ったが、まだ孝司が対応しなきゃいけない時も多々あった。


「受験勉強もあるし、もっと減ると集中できるんだけどな」

孝司は今日も春乃の部屋に遊びに来てる。

孝司の家だと絵理達がいてからかわれるからだ。


「毎日一緒に帰っても、付き合ってるように見えないのかな…」

「普通に友達に見えるのかもね」

「彼女いたときは、どうしてたの?」

「え?!」

春乃は真面目に、聞いた。

「ん…。手とか繋いだり…」

「…後は?」

「あと?!」

「これと言って人に見せるものは…」


「人に見せないやつって?」

声を低くして、春乃が迫るように言った。

「え…」

孝司は汗をかいてきた。

「別に、皆、普通にやるようなこと…。

…っていいじゃんそんなの」

「ふーん」

「なんで怒るの?」

「別に…」

「カレカノだから…?」

孝司は試しに聞いてみた。

「え?」

(あ、そうだった)。

「ごめん、フリなの忘れてた」

春乃はしょぼんとした。


孝司はなんとなく嬉しかった。

「じゃさ、明日から手繋いで帰ろ?」

孝司は言った。

「え?!」

春乃は思わず声をだしたが、

「…うん」

と小さく言った。


「…手繋ぐ練習する…?」

孝司は手を出してひらひらした。

春乃は、恥ずかしくて繋げなかった。

孝司は、春乃の手を取った。

「恋人繋ぎ…のほうがいいのかな…」

そう言って指を絡ませた。

春乃の頭がパンクしそうだった。


孝司はぱっと手を離した。

「明日からね」

余裕そうに振る舞ったが、本当は孝司もすごくドキドキしていた。




「手、繋ぐ?」

学校からの帰り道で、孝司は春乃に言った。

「うん…」

春乃は、恥ずかしそうに言った。

孝司はそっと手を取って指を絡めた。

「孝司、ごめん!恋人繋ぎは恥ずかしすぎる!」

春乃の顔が真っ赤になった。

「うん、じゃ、普通に繋ごう…」

「うん…」

「良かった…」

「?」

「俺も恥ずかしかった」

2人で笑った。


春乃の手は冷たく、孝司の手は温かかった。

「…春乃の手冷たい、冷え性?」

「…うん。冷え性。孝司は熱いね」

「うん、冷えたことない」

 「そんなことあるの?」

「ある」

「いいな~」

なんでもない会話をしててもお互いドキドキしている。


「手繋いでるの見たら、さすがに付き合ってると思うよね」

「見てたらいいね」

「え、見てないの?」

「だとしたら、意味ないね」

「ね」

「ただ、冷えた手温めてるだけ。もしくは、俺の手を冷やしてるだけ」

「冷えたことないんでしょ?」

春乃は笑った。

「うん」

「じゃ、ただのカイロだ」

「人の手カイロ呼ばわりしないで」

「ぬるま湯」

「そこは、温かいお湯…温泉とか」

「どんな効能あるの?」

「リラックス」

(リラックスどころが緊張してます)


そんな会話してたら、2人が、別れる場所についた。

2人は手を離した。

「じゃね」

「じゃ」

別れたあと

(緊張した…)

2人とも同じ事を考えていた。

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