つきあったら、男寄ってこなくなるよ


孝司は去年まで、春乃がどれだけ告白されようと気にならなかった。

今年は、春乃が嫌がっているのを知っているので、孝司は春乃に告白する男子から、春乃を守る役目に自然となっていった。

今日もわざわざ春乃の家まで来た男子がいて、先に春乃を家に入らせて、孝司が彼氏のフリをして断わった。


「…もし、付き合ったとしても、こんなに大変なんだと思うと、めんどくさいな…」

孝司は、男子を追いやった後、口に出して言ってしまった。

「やばっ…」

春乃に聞こえていないか、周りを見たら、湊がいた。

(一体どこから出てきたんだ…)

「バカだなぁ。逆に付き合ったら男寄ってこなくなるんだよ」

ニヤッと笑って湊は言った。

「今が一番面倒臭いんだよ」


孝司は、最もだと思った。


孝司はそのまま、春乃の家にお邪魔した。

「春乃はさ、何が起きても、俺と友達でいてくれる?」

「?うん」

「ホント?」

「うん」

「例えば、俺たちが、付き合ったとして…、でもうまくいかなくて、別れたとしても…。逃げないでいてくれる?」

「?」

「もし…。もし、約束してくれるなら…」「?」

「…付き合あわない?」

「えっ!」

「約束してくれる?」

孝司は必死で聞いた。

「わからない…頑張るけど…」


「約束して」

孝司は切実にお願いした。

「いや…わからない」

「何で?」

「もし別れる事になったら…。恥ずかしくて会えないかも」

「何で?」

「だから、恥ずかしくて」

「…」

孝司は黙って考えた。


「てかさ、高校生まで忘れるって話だったじゃん」

春乃が言った。

「そうだけど。春乃のボディーガードが…。付き合ったら、男子が寄って来なくなるよ?」

(やべっ、今の状況めんどい感じで言っちゃった)

「…」

「ごめんなさい…」

(やっちまった)


春乃は全然気にした様子もなく、

「確かに、男子は寄って来なくなる…」

春乃は呟いた。

(でも、付き合ってだめだったら、困る。

外見だけ、付きあってるカップルに見えたら…)


「付き合うふりしてくれるの?」

「え?」

「孝司の言うとおり、男の子寄ってこなくなるし。孝司が中学校の間、それでもいいって言ってくれるなら…」


(フリでいいの?)

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