好きなのかな…?

孝司は春乃の手を握った事に、今更ながら、照れてしまっていた。

(好きじゃないなら手、繋いだりするな…か)

姉の絵理から言われた言葉を思い出した。

(好きなら問題ないんだろうな…。好きなら…。好きなのかな…?)

何となくそんな事も思ったが、春乃には中途半端な気持ちで、付き合ってなんて言いたくなかった。

(じゃ、手とか繋いだらまずかったかな…)


孝司は学校が終わって帰るとき、玄関で、春乃と何人かの女子と男子で話しているのを見た。

なんとなく横目で見ていたら、一人の男子が孝司を睨んだ。

(こわっ)

睨まれた理由は、大体わかる。

こんな事は何度もある。


孝司はさっと逃げた。

(女子もいるし大丈夫だろう)


学校を出て、2、3分の所で、

「孝司!」

声をかけられた。

その方向を見ると佐和が孝司の方に走ってきた。

「どうしたの?」

「春乃、男子と女子に囲まれて困ってる」「え?」

(さっきの、楽しく話してたんじゃないの?)

「サッカー部の男子が春乃の事好きで。告る時に、友達も連れて行ったみたいで。」

「そんなことある?」

「春乃、ガード堅いでしょ?応援みたいな感じだったんじゃない?」

「孝司助けに…」

と言う前に、孝司走って学校に戻った。



孝司は、春乃とサッカー部の男子と女子が喋っている所へ向かった。

春乃の顔は、怯えていた。

(これに気づかないなんて…)

孝司は自分を責めた。

「春乃」

孝司は声をかけた。

「あ…」

春乃は助けを求めていた。

「ごめん」

孝司は春乃に言った。


「ね、ちょっとあっち言ってて」

気が強そうな女子が言う。

「何してんの?」

孝司がドスのきいた声でいった。


サッカー部の男子は、カチンときた。

「谷川って、別に春乃ちゃんと付き合ってるわけじゃないんだろ?なら、関係ないから」

「付き合ってるやつしか、助ける権限無いの?」

「助けるって何だよ」

「…困ってるから」

「…」

皆黙った。


「春乃行こ」

孝司は春乃の腕を掴む。


「待てよ」

サッカー部男子が、孝司の肩をドンっと叩いた。

「何?」

「お前みたいに地味なやつに言われると腹立つんだよ」

「…俺、3年間学年成績1位だから。地味なの見た目だけだから」

「勉強しかやってねーだろ」

「1位だから」


相手がひるんだ隙に、孝司は春乃を連れて、春乃のクラスに戻った。

「鞄、持って。帰ろ」

「うん。ありがとう」

「うん。最初気づかす逃げちゃった」

孝司は、ちょっと気まずそうに笑った。

「うん。戻ってきたから、びっくりした」

春乃は笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る