手強いライバル

孝司が春乃の教室に行くと、珍しく後輩の男子と話をしていた。

孝司は春乃に話したい事あったが、いつでも良かったので、声はかけず自分の教室に戻った。


孝司は帰りにたまたま春乃と会い、一緒に帰った。

「私、小学校の時少し子役事務所に入ってた時あったでしょ」

春乃が話し始めた。

「うん」

「1回だけ、ドラマのちょい役で出たんだけど、その時一緒だった子が、うちの中学にいて」

「へー」

「いっこ下なんだけど」

「ふーん」

「びっくりしたー」

「ふーん」

「…興味なくても、もうちょっとうまく相槌うとうよ…」

「うーん」

春乃はバシッと叩いた。



次の日も春乃はその子と話をしていた。

孝司はそれを横目に自分の教室に戻ろうとした。

「孝司」

春乃が孝司に声をかけてきた。

「うん?」

「コレっ。見て」

春乃が孝司に写真を見せてきた。

「私の子役時代」

「へー」

子役の集合写真のようだった。

「私かわいいねー」

「ねー」

春乃は孝司の適当な返事にムッとした。

(学校じゃなきゃ、絶対叩いてる)


「あ、で、この子。同じドラマに出てた…」

顔を見ると、

「…あれ?ちょい役じゃなくて、ガッツリ出てた子じゃない…?」

「え、覚えてくれてるんですか?」

人懐っこい笑顔で孝司に話かけてきた。

「うん。春乃が出てるからって、あのドラマだけは、ずっと見てたから…」

「ありがとうございます」

「あ、でも名前は覚えてなくて…」

孝司は申し訳なさそうに言った。

「ははっ。逆に覚えてたらすごいです」

また人懐っこい顔で笑った。

「片瀬新(かたせしん)っていいます」

「片瀬くん」

孝司は芸能人にあったみたいで、少し嬉しかった。

「こっちが、谷川君」

春乃が適当に紹介した。

孝司はムッとした。


「彼氏さんですか?」

「違う違う」

孝司は言った。

「仲いいですね」

「幼馴染だよ」


新は、子役をやってただけあって有名らしい。

文化祭のステージにも上がってたらしく、可愛いということで3年生女子にも知られているようだ。


孝司はそういうのに疎くて、今回初めて新の事を知った。

新が春乃の教室に行ったとき、クラスの女子が騒ぎ出して、またこのクラスに来てと誘ったようだった。

新はたまに春乃のクラスにいる。


新は孝司にも会えば、手を振ってくれたりするので、嫌な感じはしなかった。


「春乃ちゃん、美紗さんって覚えてる?」

新は春乃に話しかけた。

「覚えてる〜」

「あと、たけちゃんと、矢田ちゃん」

「覚えてる〜」

「この三人は今でも連絡取ってて」

「へぇ。元気?」

「最近会ってなくて。だから春乃ちゃんも一緒に皆で集まろ」

「いいね。楽しみ」

春乃は嬉しそうな顔をした。


 

「わ~。春乃ちゃん、久しぶり〜」

美紗さんが迎えてくれた。

今日は、簡単な同窓会をしようとカラオケ店に集まった。

「美紗さ~ん!」

春乃は両手でタッチした。

「たけちゃん、矢田ちゃん〜」

「春乃ちゃん元気だった?」

「うん、元気元気」

「前より可愛くなってる〜。やめなきゃ、良かったのに〜」

「可愛いけど演技がね、下手くそすぎてね」「そーだったね」

新が笑っていう。


「あー、楽しすぎるー」

春乃はジュースで酔っ払っていた。

「ありがとうね、新君」

「また、集まろ」

「うん」


「じゃあねー」

「またねー」

春乃は、機嫌が良かった。

「春乃ちゃん、送って行くよ」

新が言った。

「えー、いいよ、大丈夫」

「ダメ、ちゃんと送られて下さい」

「別にいいよ」

「頑固だな」

新は笑った。


結局、春乃は新に送ってもらうことになった。

「春乃ちゃん、また遊ぼうね」

「うん、また集まろう」

「…」

「?」

「えっと、今度はさ…」


2人は、春乃の家の前に着いた。

「春乃?」

湊が出かける所だった。

「お兄ちゃん」

「…あ、湊君…?」

新が聞いた。

「?」

「片瀬新です。子役事務所の…」

「あ、あぁ」

「絶対覚えてないですよね」

新が笑った。

「あぁ…」

「お兄ちゃん!」

新はまた笑った。


「てか、お前今日、M-1だぞ」

「!!忘れてたー!」

「ごめん行くね!新君送ってくれてありがとう。またね」

春乃は走って家に入った。


湊は、新の顔をじっと見た。

「?」

「春乃の事好きなの?」

「はい」

「ふ~ん」

湊は楽しそうに言った。

「あ、湊君的には、あんまりいい気持ちじゃないですよね」

「全然。あいつ、モテるから、こんなのよくあるし」

「そっかぁ。頑張ろうっ」

「…」

「?」

「ライバル、手強いよ」

湊はニヤッと笑って言った。

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