気づかなすぎた想い

「幼稚園からって…」

「…」

「どこが良くて?」

「…」

「春乃の方が全然モテるし、人気あるし」「…」

孝司は黙る春乃の顔をずっと見ていた。

「俺…、酷い事言った…」

春乃は首をふる。

「春乃はさ…」

「?」

「俺ね…」

「?」

「春乃は、美人だし。頭いいし、友達多し、すごいモテて」

春乃は小さく首をふる。

「でもさ、小さい頃から、俺とずっと友達でいてくれて」

「…」

「すごい、嬉しくて…。でも、なんていうんだろ…。春乃モテるから、自分が春乃の彼氏になりたいとか、なりたくないとか…、最初から、自分を除外してたから…考えたことなくて…」

孝司はおもいっきり下をむいた。

孝司も顔が赤くなっていた。


2人とも黙って、座っていた。


ガチャ。

玄関の開く音がした。

「バカップルが帰ってきた」

孝司のその言葉に春乃は思わず笑ってしまった。

顔はうつむいままだが、笑ってる春乃を見て孝司は安心した。

「帰らなきゃね」

孝司は春乃に言った。

「…うん」


2人が部屋を出ると、丁度、姉の絵理とその彼氏のパブロがいた。

もう10年ほど前から、パブロは谷川家で同居しており、今も一緒に住んでいる。

「春乃ちゃん来てたんだね」

絵理はにっこり笑った。

「あ、はい」

春乃は慌てて言った。

「二人共相変わらず仲いいね〜」

パブロは、孝司と春乃を見かけると、必ず茶化す。

「…そうだね」

いつもの返事をしたが、孝司は少し挙動不審になってしまった。

パブロと絵理は2人に何かあった事に気がついた。

孝司も、2人に気づかれてることがわかった。

(春乃は多分気づいてないよな…)

3人ともがそう思って春乃を見た。

3人が見てくるので、春乃はびっくりした。

「?」

春乃は良くわからないので、とりあえず笑った。

(やっぱり)

3人は笑った。


「…じゃあ、お邪魔しました…」

玄関で春乃は元気なく言う。

「うん。春乃、さっきの…ちょっと時間ちょうだい」

「あー、いいのいいの。もう大丈夫だから」

「え?」

「別に何も考えなくて大丈夫。」

「え?」

「じゃね」

春乃は孝司の方を一切見ずに行ってしまった。


(こりゃ、気付かないはずだ…。)

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