第3話 君と見るプラネタリウム

「ゴホッ…ゴホッゴホッ……すいません」


「じっとしていろ。すぐに水を持ってきてやる」


 プラネタリウムを作り始めて一年が経った頃、俺は流行り病に蝕まれていた。王国でもかなりの感染者が出ているらしい。


「お前まで病に罹るとはな」


 近所で常連だったアジールさんは俺と同じ病に侵され、数週間前に亡くなった。感染力が高ければ致死率は下がるはずなのだが、異世界の感染症は感染力も致死率もかなり高い。


 国の病院の病床はすぐにいっぱいになり、多くの人が治療を受けられずにいた。


 本屋の裏にある休憩室兼俺の寝床で俺は3日ほど寝込んでいた。


「せっかくお店も繁盛し始めて来たというのに」


 感染症が流行し始める少し前から、この本屋には多くのお客さんが来るようになった。


 俺が働き始めた時には山のように置かれていた本たちも今ではきちんと本棚に収められ、店の外見もきれいになった。


 多くの客が店に訪れ、様々な本を買っていった。絵本、小説、伝記、図鑑、詩集…



「店長…早く…あれを完成させましょう。俺が死なないうちに…」


「……死ぬなどと言うな」


「人間はいつか死にます。俺はあれを店長に見てもらってから死にたいんです」




「やった~ゴホッ」


「完成だ~」


 それから三週間ほどでプラネタリウムは完成した。俺と店長はいろんな本や知識を頼りに一年ちょっとかけてこれを完成させた。


 それは紙で出来た球体に穴をあけて、中から光を灯すことで周囲に疑似的なプラネタリウムを作るという簡素なものだった。


「何書いてるんですか?」


「日記だ。お前と私の…これを作った日々を本に残すために」


「そうですか…ゴホッ」


「大丈夫か…」


「…早くこれに光を…」


 夜になり、外が暗くならないとこの疑似プラネタリウムは意味がない。真っ暗の中で照らすことで完成する。


「じゃあ…光を灯すぞ…」


「……はい」


 そういうと店長は疑似プラネタリウムに謎の光る石を入れた。




 

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