第2話 見ている星空は同じ
「店長…あれがオリオン座です」
「オリオン…確か英雄の名前だったか」
「はい、半年前に見た、あのさそり座から逃げているので二つの星座は決して同時に見ることは出来ないと言われています」
「なるほど…なるほど」
俺の説明を興味深そうにシエル店長はメモしている。時々「そんな発想が…」や「そういう風に見ているのか…」などの独り言を漏らしている。
こちらの世界の星座は俺がいた世界と反対になっていた。この地域には四季があるそうなのだが、今は夏に当たるはずなのにオリオン座が出ている。
店長と俺は本屋の屋上から星空を眺めていた。
「結構出来てきましたよ…」
「おお、これならもう一年ほどで完成するな」
「そうですね…すいません。俺が作りたいとか言ったのにあんまり覚えてなくて」
「何を言う、私だけなら100年くらいかかるぞ…これ」
俺が本屋でアルバイトを始めてから一年が経っていた。ここでの暮らしにも慣れ、何とか生活を送ることは出来るようになってきた。
「アジールさん、いらっしゃい」
「おお、まだ生きていたかアジール」
「まだまだ元気だよ」
初老の老人が店に入ってくる。店長の友達らしく近所で骨董品を販売しているらしい。最近は園芸の本を買っていくことが多い。
「また、園芸の本ですか?それなら…」
「ああ…いや、今日は絵本を買いに来たんだ」
「絵本ですか…」
「ああ、孫の誕生日に絵本をプレゼントしようと思って…」
「それなら8列目の棚の真ん中らへんにあるぞ」
店長はこちらを見ず、何かの本を読みながらそう言った。
「おお、ありがとう…シエルお姉ちゃん」
「だから…お姉ちゃんと呼ぶなと言っているだろうが」
「ハハハハ」
店長はアジールさんが子供の時からの知り合いらしい。
アジールさんは笑いながら、言われた通りの本棚に向かって行く。エルフの一族は長生きするため多くの出会いがある分、たくさん別れも経験するらしい。
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