異世界本屋でプラネタリウムを見る
広井 海
第1話 異世界本屋でアルバイト
この世界に飛ばされて早三か月。毎日食べる物にすら困るような日々。お金を稼ぐ方法を模索しながらこの王国にやって来た。
チート能力や才能などは無く、本当に何も持たずこの世界に来てしまったため生活するのでやっとだった。
「はい、店の前の張り紙を見てきました」
王国に到着して2日目、俺は町はずれにある本屋に居た。みすぼらしく掃除の行き届いていない店先、中も山のように積まれた本と埃でいっぱいだった。
「なんだ…お客さんと思ってしまったじゃないか」
店の中には人…いや耳のとがったエルフが一人いた。名前はシエルと言うらしい。この店を一人で経営している。
「高いお給料は出ないが、それでもここで働きたいのかい?」
「はい、ここで働かせてください」
どこかで聞いたことのあるセリフが自然と口から出てしまう。
「やれやれ…仕方ない。君を採用しよう」
「ありがとうございます」
「ではさっそく…店の掃除から始めよう」
そして俺は店のアルバイトとして本屋で働くことになった。主に店の清掃、本の品質確認、チラシ配りなどの雑用としてだが、それでも自分でお金を稼ぎ、ごはんを買うことが出来るというのは幸せだった。
アルバイトとして三か月ほどが経った頃、ふと気になったことを質問してみる。
「店長って元々何やってたんですか?」
「ん?…あぁ、昔…130年ほど前は占星術師をしていたんだよ。いろんな国の偉い人の未来や運勢を占っていたんだ。」
エルフの平均寿命は人間の5倍ほどあるというので大して驚かない。この知識もこの本屋で読ませてもらった本のおかげだ。
「じゃあ…星座とかって知ってます?」
「星座?なんだそれは?」
「星にもいろいろな形があるんです。俺…元の世界でプラネタリウムっていうのを自作してたんです」
「ぷら…ネタ…りうむ?」
「天体の様子を映写機で映し出せるものなんですけど…」
「興味深いな…よく聞かせてくれ」
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