第15話
セリアとの食事会が終わり、セリアを乗せた馬車を見送った公爵家夫妻は振り返って屋敷に戻る頃には先程までの柔らかい雰囲気から殺伐とした雰囲気に切り替わる。
公爵夫人は今回の出来事を知っている人物を広間に呼んでいた。広間には公爵家当主を始め、執事や騎士、侍女まで集められていた。
「あの令嬢に何を頼んだかは知っております。ですが、なぜ彼女なのでしょうか?もっと他にも学生は居たでしょうに、なぜ彼女、子爵令嬢なのですか!お答えください、コリン。」
「あ、ああ。他の者も居るには居たのだが、教えるのが公爵家。それも嫡男と知るや否や
「では講師でもよかったのでは無いのかしら?いくらなんでも講師にくらい頼んだのですよね!?」
「ああ、頼みに行った。だが学園長からの返答は意外なものだったよ。
『この学園には私以外の講師の中で公爵家に手を出せる者はいないよ。少なくとも大人の中で、はね。 そこで相談なんだが、仮に子息と同じ学生の身でありながら、講師よりも学業に秀でている者が居る、と言ったらどうするかね? それも、下級貴族のね。公爵家が下級貴族に教えを乞うとはどうなのかな?』
…と言われたよ。誰も手を貸さないならと
「それが彼女だとでも?どこにでも居る令嬢にしか見えなかったわよ。何か根拠でもあるのかしら?」
「…2つあるよ。まず1つは学園長が言うには、普段の成績が良くて、でも試験では平均点に近い成績を続けているんだ。それも毎回、中途半端な回答であるんだぞ?そんなの難しいよ、それも小さな問題ならある程度は解いて、あとは無回答とか。」
「確かに毎回取るのは難しいわね。で、もう1つはなんなの?欲が無いのはよく分かったけどね。食事でもマナー通りに食べてはいたけれど、ちょっと動きが鈍かったし。」
「彼女は見掛けだけじゃないって事と、迫力が半端ない。それに護衛もね。」
「それは、本当なの?」
「本当さ、血の気が多い騎士が居ただろ?あの騎士が帯剣の柄に手を掛けた途端、一瞬の殺気だけで尻餅をつかせたんだ。彼女の機嫌を損ねたら、どこまで行くのか怖いくらいだぞ?そこの執事に聞けば分かるだろうよ!」
「ふーん。あなたがそこまで言うなら今度来訪するから、その時に品定めしようかしらね。」
「程々にな? それにしても先程の話は本当なのかな? ベルトンが付き纏っている、っていう…」
「事実でしょう。あなたの所には伝わっていないかもしれないけれど、毎回従者から報告を受けているわ。ベルトンが1人の令嬢に悪意を持って突き回してるらしいわ。」
「なんてことだ。近々、ベルトンを呼んで事情を聞きましょうか。ふふふ…」
『はぁ…』
チャール公爵家内で夫人は高笑いしながら、侍女を連れて自室に戻っていく。その場に残った騎士や執事は何が起こるか気が気でなかった。
当主に
それから数日間、ベルトンは学園を休むことになり、学園内で一時話題に上がった。
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