部活動Ⅱ

 まずは一種類目、楓がよく飲むブレンドコーヒーだ。可もなく不可もなくと言ったそのコーヒーはいつもの味がしたものの、特徴にかける。言ってしまえば普通のコーヒーだからだ。奏汰は「なんと言うか」と声を出すと楓は「そう、普通すぎるのよねこれだと」と返してくる。これだとただコーヒーを無料で飲ませる会にしかならないし、そんなので部員が増えるとは一切思わない。自分なら(恋愛感情は抜きにして)入ろうとは思わないだろう。


 その後も何種類か試飲したが、どれもイマイチという感じだった。奏汰は焦りを見せるし楓も納得がいかない様子でどんどんと袋が消費されていった「やっぱりこれかな」と楓は呟くと鞄の中から更に二袋――まだ開封されてない袋を取り出した。「ちょうど昨日届いたばかりなの」と。

「お気に入りのコーヒー豆屋さんなの」と言いながら開封する。先程までとは違い、豆のままで入っている為香りは穏やかだった。


 楓はコーヒーミルを取り出し一つ目の豆を挽きだす。そうして二人分の豆を挽き終えるとミルを開ける。先程までの豆とは比べ物にならない程の香りがミルから溢れ出す。そうだ、この挽きたての香りが好きなんだ。それを笑顔でドリップする楓の表情も好きなのは未だに言えて無いのだが。

 さて、コーヒーを入れ終えると楓はコーヒーについて語りだす。楓は新しいコーヒー豆を淹れる時はいつもそうしているのだ。その流れは奏汰も一年で何回も経験してきたし、楽しそうに語る楓をいつまでも見ていたいと言う感情も湧く。


 こう言った経緯があり、部活勧誘の日に使う豆は二種類――フルッタ・メルカドンとエチオピア・ゲイシャの二種類になった。楓は部活勧誘用にいつもより多めに豆を自腹で買った。それ程までに彼女はコーヒーと言う物を愛しているのである。

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