危機的状況

 高校二年生に進級した白灯奏汰はくとうそうたは頭を悩ませていた。自分の恋愛に関してもそうだし、部活に関してもそうだ。今、奏汰の所属する部活は典型的な人員不足で存続の危機が訪れていた。

 現在所属しているのは奏汰ともう一人、先輩である高校三年生の少女、冬凪楓ふゆなぎかえでだけだ。この少女は熱い熱いコーヒー好きと言うよりもコーヒー狂いと言っても過言ではないだろう。部室に色々揃っているのにわざわざ自前で器具を持ってきたり、豆は全国の専門店から仕入れてきたりと、それほどまで少女はコーヒーを愛しているし、人間的な恋愛にはあまり興味がない――と言うより気付いていないの方が正しいのかもしれない。

 とにかく奏汰は頭を悩ませる。なぜなら奏汰は楓に恋をしているし、理由もなしに集まれる絶好の機会である部活が潰れてしまうのは痛手だからだ。だからと言ってなにか思いつく訳でも無く一学期の最初の授業だと言うのに頭に何も入ってこなかった。今日は新年度初の部活でもある。

 奏汰は初回の部活だと言うのに担任に世話話せわばなしで引き止められ、十五分程を無駄にしてしまった。奏汰は最初の五分は仕方ないものだと思っていたのだが、段々と不快感を表すようになり十分経った頃には表情筋が引きつり始めようやく解放された頃には無表情になっていた。それ程に(少なくとも今の)奏汰にはどうでもいい話であり、早く部活に向かいたいのであった。

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