僕は、いつでも真剣だ。KAC20231
裏耕記
なんで発売日が同じになっちゃうんだろう
お小遣いは持った。自転車の鍵もある。ヘルメットも被った。
よし! 行くぞ!
小学校から急いで帰った僕は、本屋へと向かう。
楽しみにしていた漫画が今日発売されるんだ。
すっごく悔しい思いをしながら、駆けっこで家に帰ってきた。
これから僕の全力、最高速度で本屋に向かうんだ。
だって早く買えば早く読めるじゃん!
ダメだ。帰り道の力も残しておかなきゃ、家までの上り坂でペースダウンだ。
それに早く本屋に行きたいけど、着いても問題があるんだ。
なんと今日発売された漫画は二冊。
どっちも発売を楽しみにしていた漫画でクラスでも特に人気のシリーズ。
そして僕のお小遣いで買えるのは一冊だけ。
二冊目を買うには来月のお小遣いを待たなくちゃいけない。
一つは、ヒーローもので戦うシーンが格好良い。
もう一つは、冒険もので宝探しにワクワクする。
どっちも面白いから選ぶのが大変だよ。
晩御飯をハンバーグにするか、カレーにするか、お母さんに聞かれた時くらい大変だ。
答えが出ないまま本屋に着いちゃった。
漫画本のコーナーは入ってすぐのところだ。
発売されたばかりだから、棚ではなくて平置きされている。
棚に入っていれば備え付けの踏み台に登れるのに。
あれに乗ると、お父さんみたいに背が高くなって格好良いのに。
お母さんは用がないのに乗っちゃダメだって言うから、今日は乗れそうにない。
さあ、人生で一番の問題だ。
どっちを買おう。
残っている本の数は同じだから、人気は同じくらいだ。
わかるよ。面白いもんね。
値段も同じ。どっちを買っても変わんない。
厚みはどうだろう。新刊は透明のビニールで包まれているからページ数を見ることが出来ない。
でも僕には裏技があるんだ。
本を並べて、手でギュって押すんだよ。そうすると、ちょっとした厚みの違いが分かるんだ。
これでどっちがお得かわかるんだよ!
……困った。どっちも同じだ。僕はどうしたら良いんだ。
僕は、いつでも真剣だ。KAC20231 裏耕記 @rikouki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます