第7話 西王母さん、その前に会議です。
いざ天狗たちにカチコミに行こうとしたら他の仙人に捕まって議会へ引きずり込まれた。
「えー被告、西王母、天を降りるという禁を破った者として何か言う事は」
「この度はまことに申し訳なく……」
「本人も謝ってるしこのくらいで」
「孫悟空は黙っていろ、禁を破った回数で言えばお前のが多い」
「はい」
議会には名だたる仙人たちが勢ぞろいしている。
流石の西王母も戦々恐々だ。
「して今回、何故、地に降りたのか?」
「
「それは人間の問題であって仙人の問題ではないだろう」
西王母はこういう仙人の浮世離れした態度が嫌いだった。
だから離反して桃園に引き籠ったし、今回、このような事をしでかした。
だから後悔はしていない。
「本来ならば牢に繋いで千年は反省させるところだ」
「しかしお前には桃園の管理という仕事がある」
「それもまたお前の不在で枯れ果てたが」
「千年も働けばまた芽吹くだろう」
「肝に命じて働くように」
そんな議会の口々の言葉に西王母は反論する。
「その今回、桃園が枯れた事について、犯人がいると私は思っています」
「仙人が仙人を疑うのか!」
「悪意無き者のみが天に座すというのに」
咳払いして議会の騒めきを止める。
「天狗の仕業、この一言で十分なのでは?」
議会が静まり返る。
天狗はこの場にいない。
天狗の役目は天の関所の門番であり。
禁を破る者がいないかを見て裁くのが仕事である。
まあ孫悟空や西王母を逃がしているのだが。
裁く仕事ならばこの場にいなくてはおかしいのではないかと思うかもしれないが、現行犯を捕まえるのが天狗の仕事であり、事後処理は含まれないのである。
議会は沈黙に包まれてしまった。
恐らく仙人の間で様々な思考が錯綜し、渦巻いている。
しかし、それに付き合っているほど西王母は暇じゃない。
「どうでしょう、犯人捜し、この西王母にやらせてはいただけませんか」
「……自分の責任は自分で取ると?」
「ええ」
「他の皆の意見は」
暫定的に議会を取り仕切っていた老師が意見を促す。
が誰も答えない。
「異議はないらしい、西王母、この度の桃園枯渇事件の犯人を突き止める事を条件に、天から地に降りてはいけないという禁を破った事を不問にする」
西王母は小さく拳を握った。
こうしてようやく天狗への現地調査が始まるのだった。
🍑
天の門。
天狗が槍を持って待ち構える形だけの絶対に通れない領域。
いや強いて言うならば地から天に昇る事は禁じられていない。
人が何かを極め、仙人になる時、その門は開かれる。
そこに飛びいる。
「やあやあ天狗の諸君、元気かね!」
「げ、西王母」
「げ、とは何か、げとは」
「お前のせいでまた俺達は説教を喰らった。孫悟空、お前もだ。いつもお前達みたいなやつのせいで天狗は割を食う」
「だからって桃園を枯らすのはいかがなものかね」
すると天狗は首を傾げる。
「なんのことだ?」
「とぼけるなすっとこどっこい、天狗の恨みつらみが重なって、私の桃園を枯らしたんだろうそうだろう」
頭に血が昇っているのか、いつもの頭の回転のいい才ある西王母はどこへやら、だ。
「そうやって俺達を悪者にするな、説教喰らってずっと門で立ちっぱなしだったってのに、いつそんな暇があるというのだ」
「うぐ……」
返す言葉が無い。
推測だけで決めてかかっていたので、証拠もない。
万事休すとはこの事だ。
するとそこで孫悟空が助け船を出した、墓穴と言う名の助け船を。
「まあまあ、あの桃は美味いが飽きるし、いい加減、品種改良した方がいいとみんな思ってたんだろうよ、天狗もそうだろ、な?」
も? 今、「も」言ったよなこいつ。西王母は孫悟空に目を向ける。
そこには「私は口を滑らしました」と顔に書いてあった。
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