第3話 霊木の大鬼
「よく一目で霊木だと分かりましたね?」
来来の言葉で呆けていた西王母の意識は現へと戻された。
「だって……こんな巨大な樹……」
「確かに滅多にあるものじゃありません。だけど大きい木だからと言って霊木とは限らないでしょう?」
「それは……」
自分が仙人だから分かったとは言えないし第一信じないだろうし前述の通り信じられえても困るのだ。仙人が天から地に降りるのは禁じられているのだから。
「娘々さん、本当は知っていたのでは? 王族の事も、霊木の秘密も」
霊木の秘密、そんなもの仙人が見れば丸わかりだ。
巨大な鬼が憑いている。天を突く二本の角、赤い赤い肌、鋭い牙、尖った爪、やせ細った身体、それに反して出た腹。まさしく絵に描いた鬼だ。しかし、おかしいのはその鬼ではない。それを堂々と語る来来の方だ。
「来来、あなた……」
「鬼憑き、というものをご存知ですか?」
「……」
鬼憑き、それは人間に憑りつく形態の
「あはは、なんですかソレ! おもちゃ遊びは子供の頃にやめた方がいいですよ!」
火が飛ぶ、鬼火だ。それに拮抗し、いや跳ね返す
「……お前、何者だ」
「西王母、この名を地獄まで持って帰りなさい」
跳ね返した火は掻き消された。来来もとい鬼憑きは額から角を生やし甲冑を見に纏う。
矢筒と弓と矢を携えた女鬼は矢をつがえる。
「来来を返してもらうぞ」
「ははっ、出来るものなら!」
仙人と言っても西王母は桃園の主である。であるならば戦うなど不得手なのではないか? そう思う者もいるかもしれないし、実際、戦に優れた
放たれた矢を目視で避ける。そのまま一息に距離を詰める。その間、数刻も無い。来来との距離はもとから遠くなかったがいかな達人でも数歩かかる距離を一足飛びに詰めた。その絶技に鬼憑きは動じない。鎧が火を吹いたではないか。それは牽制の一手、しかし西王母は焼ける手も気にせずに来来の身体を掴む。
「言ったはずだ、返してもらうと」
「馬鹿な――引っ張られ!?」
精神と肉体の剥離、仙術、
「仙術の極み此処に見ろ――
本来ならば仏様が開く地獄への門を自力で開いた西王母はそこに鬼憑きの青鬼と巨木に張り付いた大鬼を吸い込ませて一気に祓った。
瞬間にして最大の一撃、仙人の戦いは一瞬の間に終わった。
「この西王母に隙を見せた方が悪い」
「ううん……? あれ娘々さん?」
どうやら此処に来るまでの記憶はあるらしい来来に突如倒れた事を告げると彼女は顔を青くした。
「私、また……」
「――やっぱり」
疑念は鬼の現われた時から確信へと変わっていた。これまでもたらされた情報、その全てを統合し、この
西王母は告げる。
「弟君を殺したのは――あなたなのね、来来」
そう言って侍女、いや、王唯一のご息女を指さした。
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