第27話 見守るもの

(1)


「空、おはよう」

「おはよう、翼」


 翼に起こされると僕は着替える。

 着替えて鞄を手にダイニングに向かう。

 朝食を食べると支度をして。リビングで翼たちの準備を待つ。

 冬吾と冬莉も生後3か月が経ち表情豊かになってきた。

 母さんが家事をしている間父さんと僕とで遊んでやる。

 天音も混ざって冬吾と冬莉の取り合いになる。

 父さんは赤ちゃんの抱っこに慣れてないらしい。

 5人目だというのに未だぎこちない。

 僕達の時はどうだったんだろうか?


「生きた心地がしなかった」


 それが父さんの感想だったという。

 翼が仕度を終えて来る頃水奈が来る。

 冬吾を父さんに預けて僕達は玄関に行く。


「いってきま~す」


 天音の声と共に僕たちは学校に向かう。

 天音と水奈は話をしながら先を行く。

 僕達は後ろをついて行く。

 学校に着くと昇降口で天音と水奈と別れ教室に向かう。

 教室に戻ると友達が待ている。

 美希、江口姉妹、酒井君、麗華、指原姉弟、光太、学、佐倉さん。

 1年の間にずいぶん増えたものだ。

 最近はFGの連中も手出ししてこなくなった。

 高槻先生が来ると、朝礼が始まる。

 そして授業になるのだが、最近は授業の中味が変わってきた。

 この時期になると教科書の内容も粗方終わり適当に解説するだけになる。

 その分無駄にテストが増えるけど。

 そして卒業式の練習が始まる。

 卒業生を送る歌を練習したり、コールを練習したり本番さながらの練習を繰り返す。

 終礼が終ると今日は翼に「僕は学達と寄るところがあるから」と言う。


「どうしたの?」


 翼が聞いてくる。


「ごめん、ちょっと言えない」


 しかしお構いなしに翼は僕の心を覗いてくる。

 そしてくすりと笑う。


「分かった。遅くならないようにね」


 あまり高いものはいらないよ。

 そう翼は心に語りかけてくる。

 今日は男子はホワイトデーのお返しの買い物に行くことになっていた。

 ショッピングモールに行く。

 ホワイトデーのコーナーが設けられている。

 適当に物色していく。

 ハンカチが良さそうだ。

 美希の好みは大体わかる。

 ハンカチを買った。

 皆もそれぞれ買ったみたいだ。

 帰りにコーヒーショップに寄った。


「女子はいいよな。チョコレートって決まってるんだから。お返しは大変だぜ」


 光太が言う。


「まあ、お返しもお菓子でだいたいは良いらしいですけどね」


 酒井君が言う。

 悩むってことはそれだけ相手の事を考えてる証拠なんだろう。

 その後家に帰ると翼が部屋に入ってきた。


「どこ行ってきたの?」

「ショッピングモール」

「何買ったの?」

「……当日までのお楽しみ」

「ってことはやっぱりお返し買って来たんだ」


 嵌められた。


「そんなに大したもの買ってないよ?」

「……もうすぐ夕食だって」

「わかった」


 そう言うと翼は部屋を出る。

 それ自体が僕の翼への気持ちのお返し。

 その日が来るまでそっと机の引き出しにしまっておく。

 そのあと夕食までゲームをしている。

 「また明日ねって」言って笑う美希にこんなにも好きだと気づく。 

 あの日から増えていく僕の気持ち。

 2人で歩いたら翼の歩幅がやけに小さすぎて、置き去りにしないように初めてその手に触れて、下を向いたら2人の影が並んでいた。

 翼に逢うためこの瞬間に生まれた僕らならば、日々も歩んでいけるでしょう。

 少し真面目に書いたラブレターも一緒に渡そう。何年先も一緒にいようって。

 あれからずっと優しい気持ちで溢れた僕らだから人生も楽しんでいけるだろう。


(2)


「SHに入れてくれない?」


 クラスメートの花山彪吾が言ってきた。


「なんでだ?」


 私は聞いていた。


「FGよりは楽しそうだから」

「特に楽しいことなんてないぞ?」

「そう言わずにさ、頼むよ」

「お前なら別にグループに入らなくても女子いっぱいいるだろ?」


 こうして私と話をしているのも周りの女子は見てる。

 彪吾はモテる。そんな彪吾に話しかけられると私まで面倒事に巻き込まれる。 

 そんなのはごめんだ。

 その時喜一達の声が聞こえた。


「お前には関係ないだろ引っ込んでろ!」

「嫌がってる子をしつこく勧誘するなんてどこのねずみ講!?」


 彪吾の妹・花山鈴が喜一とやりあってる。

 どうやらFGにしつこく勧誘されているクラスメートを鈴が見つけて絡んだらしい。


「理由はあれで許してもらえないかな?」


 鈴も入れろって事か?


「良いじゃん、入れてやれば?」

「最近桜子弄りもあいつらのせいでやることねーしな」


 FGに標的を変えて苛め抜くってのもありかもしれない。

 祈と水奈は言う。

 確かに最近暇だ。

 何か退屈しのぎはないかと考えていたところだ。


「わかったよ。スマホ出せ」

「ありがとう。恩に着る」


 彪吾を招待すると彪吾は鈴と楓を招待する。


「ちょっと勝手に私を招待しないで彪吾!」


 彪吾の妹・花山楓が来た。

 楓とはどうも馬が合わない。

 楓は真面目に勉強しているのに成績は私の方が上なのが気に入らないらしくて勝手に敵視されてる。


「まあ、いいじゃん。皆で楽しくやろう?」


 竹本花が仲裁に入る。

 花と彪吾達は従妹の関係にあるらしい。

 竹本花の母親・竹本咲の兄が花山彪吾の父親・花山満になるんだそうだ。


「どうでもいいけど、あれ止めた方がいいんじゃね?」


 遊が言う。

 やれやれ。

 私は席を立つと喜一に近づいた。


「な、なんだ?お前らには関係ないぞ?」


 喜一は言った。


「それが関係あるんだよ。鈴はSHに入った。後は言わなくても分るよな?」


 SHに手出ししたら殺す。

 そういう意味を込めて言った。


「私はSHに入った覚えはない」

「スマホ見てみ?」


 私が言うと鈴はスマホを見る。

 暫く見てから鈴は考えてSHに入った。


「で、何やってたの?お前」


 私は喜一に聞いていた。

 脅して仲間を増やす。

 相変わらずダサい真似してんな。


「私は休憩時間と言う貴重な時間を割いてここに来た。これ以上面倒な真似させるな」


 喜一達は何も言わずに解散した。

 脅されていた男子から礼を言われて席に戻る。

 桜子が来た。

 授業が始まると私は寝る。

 授業が終わると給食の時間。

 SHのメンバーが集まって給食を食っていた。


「で、水奈達は何か策あるのか?FG揶揄う方法」


 私は質問した。


「うーん、ただ袋にするだけじゃ面白くねーよな」


 水奈たちも悩んでいる。

 人助けなんて面倒な真似もしたくない。


「FGっていえば川島君が水島先生に告ったって聞いた」


 鈴が言う。

 その話は聞いていた。


「それって喜一のしかけたどっきりだったんだろ?」


 遊が言う。


「山本君はそのつもりだったらしいんだけど川島君は本気だったみたいだよ」

「なんでそう言い切れるんだ?」


 私が鈴に聞いていた。


「だって日頃の川島君見てたら普通そう思わない?」


 鈴が言う。

 つまり鈴は川島の事をずっと見ていたわけだ。

 パパ達が作ったグループ・渡辺班は縁結びの神様だと言われていたらしいな。

 ちょっとは楽しめるか?


「おい、蓮太!ちょっと来いよ!」


 私は川島を呼び出した。

 川島はすぐに来る。

 その動向をFGの連中は見てた。


「何の用だ?片桐」

「お前今日放課後教室に残れ。命令だ」

「なんでだよ?」

「うだうだ言わずに残れ」


 それ以上の反論は許さなかった。


「わかったよ」


 川島はそう言うと席に戻る。

 その川島にFGの連中が群がってる。

 大方脅してるんだろう。


「天音、お前まさか川島の事……」


 粋が何か言おうとしてた。


「んなわけねーだろ!こう見えて大地の事大切にしてるつもりだぞ」

「じゃあなんで川島を呼び出したんだ?」


 粋が言うと私は鈴を見てにやりと笑った。


「鈴が蓮太と話しがしたいそうだから」


 私が言うと鈴が驚いていた。


「わ、私そんな事一言も」


 鈴は動揺している。


「別に付き合えって言ってるわけじゃない。ただ言いたい事はちゃんと言った方がいい。思ったら吉日だ」


 私は鈴にそう言う。


「……わかった」

「じゃ、決まりだ。今日の放課後な」


 放課後になると普段は教室にはそんなに人は残っていないに今日はやけに多かった。

 SHのメンバーとFGのメンバーが残っているのだから。

 二組のメンバーが見守る中話は行われた。


「川島君、水島先生の事諦めた方がいいよ」


 鈴が言う。


「べ、べつにあんなおばさん趣味じゃねーし!話ってその事?」


 川島が言う。

 だけど鈴は続ける。


「そうやってずっと自分の気持ち誤魔化し続けるの?それって楽だと思ってるかもしれないけど、ずっと辛い思いをつづけてるんだよ」

「だからどうしてそうなるんだよ?」

「どうしてもこうしても見てたらわかるじゃん!」

「お前の勘違いだって。こんな話なら俺は帰るぜ」


 そう言って帰ろうとする川島の手を掴んだ。


「何の真似だ片桐」

「人の色恋沙汰にとやかく言うつもりはねーが、鈴の話はまだ済んでない。逃げるな!」

「まだ話あるのかよ。水島の事ならさっき言った通り別に何とも思ってねーよ」

「そんな事言ったら水島先生可哀そうだよ!」


 鈴が叫んだ。


「水島先生だって大人だよ。川島君の本音くらい気づいてる!川島君はそんな風に誤魔化してるから気づいてないかもしれないけど、水島先生、川島君のいたずらに対する対応が変わったよ。凄く優しくなってる」


 それはまるで自分の子供をかわいがるように。いつか傷ついた羽を癒して再び飛び立つのを見守る様に。

 鈴がそう言った。


「……どうしようもないだろ?好きなんだから。歳の差。生徒と先生の身分差。何より旦那さんがいる。そのくらい分かってる。だけどどうしようもないんだよ!」


 川島が言った。


「何?お前本気で好きだったわけ?水島の事」


 喜一が言うとFGのメンバーは笑い出した。


「何マジになってんの?馬鹿じゃねーのお前」


 喜一が言うと彪吾が椅子を蹴飛ばす。


「マジになって何が悪いの?そうやって茶化す事しか出来ないやつの方が余程ダサいと思うんだけど?」


 彪吾が言うとFG全員が黙り込む。


「蓮太。お前告ったの本気だったんだな?」


 私が川島に聞いていた。

 川島はうなずく。


「で、桜子はなんて言ったんだ?」

「……気持ちだけ受け取っておくね。ありがとう。頑張ったねって」


「でも先生結婚してるし、その気持ちを受け入れることは出来ない。ごめんなさいね」と断られたらしい。

なんだ、桜子はちゃんと返事してるじゃねーか。


「お前それで悪戯続けてるのか?」

「そうだけど」

「……蓮太、やっぱりお前が逃げてるだけじゃないか」

「どうしようもないだろ、諦めきれないんだから」

「誰も好きだった気持ちを捨てろって言ってるわけじゃねーよ。ただ自分の気持ちにケジメつけたんだったらいい加減独り立ちしろ!今のお前は桜子に甘えてるだけだ!」

「どうしろって言うんだよ?」

「うちの愛莉が言ってた”親は子供が巣立つのを見守るだけだ”って一人で生きていけるって確認するまで見守るんだって」

「言ってる意味がわからねーよ」

「もう川島君に水島先生は必要ない。自分ひとりでやっていけるって水島先生に伝えなきゃ!」


 鈴が言った。


「出来ないからこうしてるんだろ!」


 すると鈴が川島の手を握る。


「私達はまだ子供。1人立ちなんて無理。でも二人ならなんとか行ける気がする」

「どういう意味だ」

「川島君が勇気を出したから私も勇気を出す。花山鈴は川島蓮太君が好きです。ずっと見てました。一途なあなたを見てたら恋に落ちてました」


 鈴が告白すると大声で笑うFGのメンバーたち。


「なんだよ結局花山が蓮太が好きだから私と付き合ってってだけじゃねーか。マジで草生えるわ」


 私はそいつの胸ぐらを掴み持ち上げる。


「いい加減黙っててくんねーかな?クソガキ!」


 すると川島が言った。


「……ごめん。今は無理。自分の気持ちに整理つかないまま付き合うのはよくない事だと言う事くらい俺にもわかる」

「……うん」

「でも、ありがとう。歩き出せる気がする。その時が来たら俺から鈴に伝えるよ」

「わかった」


 話はついたようだ。


「川島分かってるのか!?そいつはSHのメンバーだ!そいつと付き合うって事は……」

「喜一こそ分かってるんだろうな?約束忘れてないだろうな?」

「お前らから粉かけて来てんじゃねーか!?」

「そうだよ、悪いか?私達から手を出さないとは一言も言ってない。ムカついたらぶん殴る。文句があるなら今相手してやるぞ」

「天音、それは面白い考えだな。最近こいつらがちょろちょろ鬱陶しくてムカついてたんだよ」

「今日からお前らは私達の標的だ!塵になるまで相手してやるぞ!」


 祈と水奈が言う。

 喜一は川島を連れて去って行った。


「じゃ、私達も帰ろうぜ鈴」


 私は鈴の肩を叩く。


「うん」


 鈴の頬には涙が伝っていたが晴れ晴れとした爽やかな笑顔だった。

 そこには何の迷いもなかった。


(3)


「あの……そこを通してもらえませんか?通らないと家に帰れないんですけど」


 私達は黒頭巾を被った男子たちに廊下を塞がれて困っていた。


「通りたかったらFGに入るか。通行料を払うかどっちかを選びな」


 そう言って男子は笑う。


「こいつ、SHのメンバーだぜ。通行料は倍だな!」


 私と恋と花山理彩は怯えていた。もう泣きそうだ。

 すると友達の花山茉が言う


「通行料って馬鹿じゃないの?いつからここがあんた達の領土になったの!?」

「今日からだよ」

「くだらない……話にならない」


 茉の妹・尚が押しのけて通ろうすると男子に突き飛ばされた。


「通さないって言っただろ?」

「女子相手に暴力振るうわけ!?」


 茉が怒っている。


「男女平等っていうじゃねーか?こんな時だけ女子だからなんて言い訳きかねーぞ」

「どうしても通りたかったら力づくでもいいんだぜ?」

「そうなの?じゃ、遠慮なく」


 飛び込んできた男子が跳び膝蹴りで男の顎を撃つ。


「やれやれ、まだそんな理不尽な事を言う方がいたんですね」


 繭も加勢する。

 気が付いたらSHのメンバーが集結していた。

 乱戦になる。

 すると図体のでかい男、山本勝次が近づいてくる。


「瑞穂ちゃん逃げて!」


 山本紗奈が間に入る。

 だめ、足が震えて動けない。

 紗奈が押しのけられる。

 勝次の太い腕が私を捕まえようとした時だった、

 勝次の腕が止まる。


「またフォーリンググレイス?」


 お姉ちゃんの友達・片桐翼だった。

 翼さんは片手で2年生とはいえど巨体を軽々と持ち上げる。

 足をバタバタとさせる勝次を私達の後方に投げ飛ばす。

 廊下を転がる勝次。

 SH5年生組が来てた。


「瑠夏からメッセージもらってね。もう大丈夫だからね。瑞穂ちゃん」


 そう言って私の頭を撫でてくれる翼さん。


「翼!雑魚は俺達に任せてそのボス猿やってくれ!」

「分かった光太」


 翼さんはそう言うと勝次を睨みつける。


「全く……猿でも反省くらいはするよ」


 翼さんがいう。

 勝次は起き上がると翼さんに殴りかかる。

 翼さんはそれを躱すと勝次の顎に肘をぶつける。

 そのまま勝次の襟を掴み受け身を取らさない投げ方をする。

 もっとも勝次が受け身を知っていたかは知らないけど。


「皆忘れてるみたいだけど、私は空や天音と同じ片桐家なの」


 倒れた勝次に近づく翼さん。

 そして勝次を見下ろす。


「ご、ごめんなさい……」


 かすれた声で助けを乞う勝次。


「ごめん、聞こえない」


 そう言って勝次の手を取ると指を掴む。


「皆が片付くまで何本折れるか試してみようか?まず一本」


 ぽきっ。

 そんな音は勝次の悲鳴にかき消される。

 勝次の悲鳴を聞いて皆が戦闘を止める。

 しかし、2本、3本と冷酷に数えられていく。


「も、もう終わったからいいでしょ!許してください」

「ごめん、何のことか分からない……めんどくさいから残り全部折るね」


 勝次の悲鳴が響き渡る。

 泣きわめく勝次を階段下までひきずる翼さん。


「やんちゃするから、階段から転んでこんな怪我するんだよ。そうだよね?みんな」

「そうですね”皆階段で暴れていて勝手に転んでけがをした”そう言う事でしょう」


 5年生の酒井善明さんが言う。

 翼さんは勝次を見下ろして言う。


「私達はたまたま現場にいて保健室の先生を呼んであげた……理解できる?」

「は、はい」

「SHに手を出すと必ず”不運な事故”が起こる。わかった?」

「はい……」


 翼さんが勝次に説明をしてる間に5年生の石原美希さんが保健室の先生を連れてきた。

 翼さんが状況を説明する。

 2年生のFG組は全員病院に搬送された。

 皆階段から転落した。

 事件はそれで片付いた。


(4)


「彪吾!全部あなたのせいよ!面倒事に兄妹を巻き込んで!」

「良いグループじゃん。楓も見てたろ。鈴もすっきりできたし」


 理由は分からないけど一個下の五つ子もSHに入った事を知った。

 茉が粋の妹瑞穂の友達だったらしい。

 SHに入ったことを知ったFGが無茶な脅しをかけたそうだ。

 それでこっそり瑠夏が救援を求めた。

 結果2年生のFG組は病院で手当てを受けた。

 原因は階段からの落下。

 もちろん親はそれで納得しなかった。

 どれだけの圧力がかかったのかは知らないが教師たちはそれ以上何も言わなかったらしい。


「こんな事で勉強の時間を割かれるなんて最悪」

「いらいらして勉強してても能率上がらないでしょ?」


 俺は妹や弟たちの宿題を見てやりながら楓に答える。

 家は親がSEやシスアドをやっていて帰りが遅い。

 休日に仕事をすることも良くあることだ。

 家の事は兄妹でやる。

 そう言われていた。

 瑠夏が家事を担当している。

 瑠夏がご飯が出来たことを告げると皆で食べる。

 そして風呂に入って2年生は寝る。

 俺はグループチャットに夢中になってた。

 22時近くになると俺も寝る。

 部屋に戻ると恵吾が起きていた。


「なあ兄貴?」

「どうした?」

「なんか学校が楽しくなってきたな」

「そうだな」


 恵吾もSHに入っていた。


「何が起こるんだろうな?」

「わかんね」

「それもそうだよな」


 恵吾はわらっている。


「んじゃ俺そろそろ寝るから恵吾もさっさと寝ろよ」

「ああ、おやすみ」


 そう言って寝る。

 一分一秒、今この瞬間も世界のどこかで誰かがきっと結ばれていく。

 もしも運命の人がいるのなら。

 運命の出会いがあるなら。

 その人はいったどこで寄り道しているのだろう?

 もうすぐ近くにいる?

 それとも遥か海の向こう?

 それでもいつかきっと迎えに来てくれる。

 会いに来てくれないなら俺から会いに行こう。

 その日まで待っている。

 もしも運命の人がいるのなら。

 運命の出会いがあるなら。

 いつになれば辿り着けるのだろう。

 一分一秒、今この瞬間も運命のその時に近づいてる。

 たった一人の運命の人と夢を見ている。

 もしも運命の人がいるのなら。

 運命の出会いがあるなら。

 何処で寄り道をしてるのだろう?

 俺はずっとここにいる。

 そろそろ待ちくたびれる頃、風の噂ではまた誰かが運命の人に出逢ったらしい。

 君が迎えに来てくれるその日まで……。

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