第13話 プール開き

(1)


「あち~」


 私は教室の中でへばっていた。

 7月。

 プール開き。

 猛暑の中唯一涼を取れる時間。

 しかしそれは今年永遠に来なかった。


「マジ暑いな。なんとかなんねーのかよ」

「エアコンちゃんと入れてるのか?」

「暑い暑いうるせーぞ!余計暑くなるだろうが!」


 遊も粋も水奈も皆暑さでイライラしていた。

 いたずらを考える気力すら失せる。

 大地は暑さなど微塵も感じさせずに黙々と教科書を見ている。

 なずなと花と祈は敢えて何も言わない。

 クラスの皆も黙っていた。

 そして朝礼の時間がくる。

 桜子が入ってくると皆席につく。

 私は桜子に訴えた。


「熱中症で倒れたらどうするんだ!?エアコンの設定温度もっと下げろ!」

「エコ対策でこれ以上は下げられないの!何度言ったら分かるの!」

「自然と子供の命どっちが大事だ!?」

「ちゃんと規定通りの設定にしてます。問題ありません!」

「俺水分補給行ってくる」


 ふらふらと教室を出る粋。


「こら、栗林君待ちなさい!」


 粋が出るとまた一人とついて行く亡者の行進。


「水をくれ~」とふらふらと出ていく様はまさに地獄絵図。

 私はそんな事をしなくても大丈夫。

 スポーツ飲料を凍らせておいたのを桜子がいないうちに飲む。

 生き返る~。


「あ、天音ずるいぞ!!」


 遊が言う。


「その手があったか……」


 祈は私を見て言った。


「しかし校長の禿もケチくせーよな、プールの水くらいケチんなっての。だから髪が少ないんだよ」


 水奈が言う。


「私は嬉しいかな。あんまりプール好きじゃないし」

「私も同感。なんか水着姿みられるのって恥ずかしいよね」


 なずなと花が言う。

 そう言う奴もいる。泳げないやつとか水着姿みられたくないとかそう言う奴は色々理由をつけて水泳の授業をサボる。

 ちなみに私も水奈も粋も遊もそう言う要素は全くない。

 水着姿か……その手があったな。

 私は席を立つとおもむろにバッグから水着を取り出す。

 そして服を脱ぐ!


「お、おいやばいって天音!」


 祈が止める。

 だけど男子は大体私が何も言わずとも目を逸らす。

 そう言う年頃の男子だと知っているからやっている。

 これで少しは涼しいか。

 もちろんそんな行動は桜子が許してくれなかった。

 粋を引きずって教室に戻ってきた桜子は私を見て顔を真っ赤にする。


「何をしているの天音!」

「暑さ対策を考えたんだよ!」

「馬鹿な事言ってないでさっさと服を着なさい!」


 桜子はこのくそ暑い中元気だな。 

 しかし真面目に何か対策しないとヤバいぞ……。

 私は授業を聞きながら涼をとる方法を考えていた。

 ちなみに服に着替える時は生活指導室に連れていかれた。


(2)


 7月。

 プール開き。

 水着姿になって解放的になる季節。

 それが僕達の小学校には今年は無かった。

 男子も楽しみにしていた。

 色んな意味で。


「あいつ絶対胸あるはずだぜ」とかそんな理由。


 美希をそういう目で見られたくはなかった。

 そう言う点では助かったかもしれない。

 美希はだいたい体調不良を理由に見学に回る。

 別に美希が恥ずかしいからとか泳げないからとかじゃない。

 美希は陽射しに弱い。

 だからテントの下でしかいられないのだ。

 ちなみに美希は同じ年頃にしてはなかなかいいスタイルを持っている。

 僕達の歳になるとそれぞれ暑さ対策を考えてくる。

 スポーツ飲料を凍らせてもってきたり、熱さまシートを持ってきたりだ。

 とてもじゃないけど下敷きを団扇にしたくらいじゃ足りない。

 休み時間になるとSHの5年生組が集まってくる。


「いや、参ったな」


 学が苦笑いしている。

 光太は建築関係の職人みたいに頭にタオルを巻いている。

 麗華さんと酒井君は暑さに強いみたいだ。平然としている。


「しかし一回水入れ替えるくらいしてくれたって良いのにな」


 光太が言う。


「この暑い中またプールを磨かなきゃいけないわけ?」


 麗華さんが言う。不満を言うなんて珍しいな。


「それは勘弁してほしいな」


 僕も翼も何も言わなかった。

 学も多分同じ心境なんだろう。

 こうなった責任が自分の身内にあるのだから。

 小学校の間では「ファフロツキーズ」と呼ばれる怪事件が起こった。

 5年生がプールの水を抜いて磨いて水を入れなおして塩素を入れた翌日に起きた事件。

 この学校では常識になっていることがある。

 事件の裏には必ず天音。

 天音も悪気があったわけじゃない。だから余計に質が悪い。

 狭い池じゃなくてもっと広い池で鯉やフナを泳がせてやりたい。

 その晩学校に忍び込んで、池で飼ってある鯉やフナを全部捕まえてプールに放流した。

 塩素が入っていたので当然死滅。

 翌朝見たら大量の鯉やフナが浮かんでいたらしい。

 そして天音や水奈を問い詰めると白状した。

 誰もフナや鯉が浮かんだプールで泳ぎたがあるものなどいない。

 職員会議が開かれ今年はプール閉鎖になった。

 怒りに震えるもの、歓喜の声を挙げるもの様々だった。

 そして今日に至る。


「で、でももう少ししたら夏休みだし」


 美希が空気を和ませようとする。


「そしたら皆で畑中のプールにでも行くか」


 学が言う。

 あと1週間の辛抱だ。

 そう思っていた時に思わぬ事態が発生する。

 突然教室のエアコンが止まった。

 騒然とするクラスメート達。

 嫌な予感がする。

 翼も同じ予感がしたみたいだ。

 そしてその予感は的中してしまうのだった。


(3)


「ちょっと待てよ」


 私は3人に指示を出す。

 省エネ対策だ?エコ対策だ?

 教室より職員室の方が明かに涼しいじゃねーか!

 子供たちの苦しみを大人にも味合わせる必要がある。

 私は水奈と粋と遊に声をかけた。

 そして屋上にやってきた。

 そして配線を見る。


「天音どれか分かるか?」


 配線図等見なくても大体わかる。

 全部を把握する必要はない。

 明らかに職員室に設置されているエアコンの室外機が唸ってるはずだ。

 それを止めてやればいい。

 それを探っていた。

 しかし、屋上にいるだけで陽射しは強いし暑い。

 挙句に室外機からは温風が出ている。

 教室にいるより地獄だ。

 ここで粋が暴走した。


「面倒くせえ!全部止めてしまえ!」


 粋が片っ端から電源を切る。


「馬鹿!そんなことしたら!!」


 私が止めるが遅かった。

 全部の室外機が止まった。

 やばい!


「皆!ずらかるぞ!!」


 私が声をかけるとすぐに逃亡する。

 真の悪い事に用務員と階段ですれ違ってしまった。


「お前たち!屋上で何やってた?」


 無視して逃走する。

 だけど遊の馬鹿が余計な事を言った。


「大人に人誅を下したまでだ!」


 やばい!遊の腕を引っ張って逃走する。

 それぞれの教室でパニックになっていた。

 このくそ暑い中エアコンが止まれば絶望だ。

 生温かい空気がだめ押しに流れ込んでくる。


「天音達またなにかしでかしたのか?」


 祈が言う。

 皆白を切る。

 だけど、用務員に見られたこと、遊の馬鹿の余計な一言が致命的だった。

 私達は職員室に呼び出された。

 室外機の電源を抜いたことはすぐばれた。

 そして、コンプレッサーが故障して修理は夏休みの間に行うと告げられた。

 つまり夏休みに入るまで。この地獄が続くという意味だ。

 死刑宣告に近い。

 その日親が呼び出された。

 粋の親は来なかった。父親が仕事だったためだ。

 母親は子供の勝手でやった事でしょとめんどくさそうにしている。


「あなたの監督不行き届きですよ!ご家庭で何を指導されているのですか?」


 職員も暑さでイライラしていた。

 そんなこと粋の母さんには関係ない。


「学校で起こったことは学校で責任とって下さい」


 よくある光景だ。

 良くも悪くも愛莉も遊と水奈のお母さんも生真面目だ。

 遊の母さんは仕事を抜け出して来たらしい。


「遊!お前という奴は!」


 遊の母さんは遊を平手打ちする。

 水奈の母さんは何も言わずに先生に謝っている。

 愛莉も同じだった。

 20時ごろようやく解放された。

 家に帰ると食事をする。

 そして風呂に入ると家族会議が始まった。


「天音、あなたはどうしてこんな真似をしたの?」


 愛莉が言う。

 私は職員室の電源だけを抜こうと思ったのを遊が全部抜きやがったと説明する。


「天音は暑いのか?」


 パパが言う。

 パパの言う事は時々わからない。


「夏だから暑いに決まってるだろ?」

「そうだな」


 何を当たり前のことを聞いてるんだ?


「夏休みに入ったらまたリゾートホテルに行くか。プールもあるぞ?」


 ?

 パパの言う事は時々わからない。

 でも連れて行ってくれるならそれは嬉しい。


「本当か!?」


 パパに聞いてみた。


「ああ、今から予約取るよ。誠の所も誘ってみるか?瑛大にも一応聞いてみよう」

「冬夜さん、今はそういう話をしている場合じゃないですよ。皆さんに迷惑をかけているんです」


 愛莉がパパを窘める。

 だがパパは首を振る。


「天音は職員室だけ冷房を効かせていてずるい。だからみんな平等に暑いと思わせたい。そう思ってやったんだろ?間違っては無いと思う」

「ですがその結果皆さんにご迷惑をかけてるんですよ。注意するべきではないんですか?」

「愛莉の言う事ももっともだね」

「でしたら……」

「天音、天音はプールに行けるという結果を得た。でも他の人はそうではない。それは平等なのか?」


 パパは言う。


「私が狡いと言いたいのか?だったら連れて行かなきゃいいじゃん!」

「父さんは天音の父親だ。どうしても娘に甘くなってしまう。困った性格だけど、そういうものらしいんだ」


 パパが愛莉の顔を見ながら言った。

 愛莉は怒ってる。


「だけど、暑いからプールに行きたい。学校は暑くてたまらない。そう言えばこんな真似しなくてもよかったんじゃないか?」

「まあ、そうだな……」

「天音のやってることは甘えだ。でもそれは親にぶつけなさい。他人様に迷惑をかけてはいけない」


 中にはプールに行けない子だっているんだよ。

 パパはそう言う。


「天音に足りないことは想像力だ。天音の発想はいつもすごい。感心するよ。だけどあとの事を考える想像力が足りない」


 パパに指摘された。返す言葉が無かった。


「もう部屋に戻りなさい。母さんと2人で相談したいから」


 パパは結局私にはお咎めが無かった。

 だけどパパの言葉は胸に突き刺さった。

 これをすればどうなるか?

 そう言う想像力に欠けている。

 パパの言う通りかもしれない。

 叱られはしなかったけど、気持ちは沈んでいた。

 部屋に戻ると翼が言う。


「怒られた?」と

「いや、怒られはしなかった」

「じゃあなんでそんなに落ち込んでるの?」


 翼が聞く。

 翼に事情を話した。


「なるほどね」


 翼は笑っている。

 そして私の肩を叩いて言った。


「プール楽しみだね。水着も買いに行かなきゃ。天音は大地に選んでもらう?」


 翼は言った。

 だけど素直に喜べなかった。

 私は間違っていたんだな。

 今さらになってパパの言う事が身に染みる。

 私は泣いていた。

 そんな私を翼はあやしていた。

 生まれて初めて反省という意味を知った。


(4)


「冬夜さん、今の対応は父親として間違っています。もっときつく叱るべきじゃないですか?」


 愛莉が言う。


「ごめんね、僕も男親だ。どうしても娘に甘くなってしまう」


 愛莉に謝っていた。


「それだけなんですか?冬夜さんの事だから何か魂胆があるんじゃないですか?」


 愛莉に隠し事はできないな。


「母さんジュースを取ってくれないか」

「いいわよ」


 母さんが愛莉と僕にジュースを持ってきてくれた。

 父さんと母さんはダイニングテーブルの席で僕達の様子を見ている。

 僕はジュースを飲むと愛莉に言った。


「2人とも愛莉に似てるね」

「え?」

「直情的で発想が凄くて。いつも驚かされる」

「この場合手を焼いていると表現するべきでは」

「愛莉に似て自分で物事を判断できる子だよ。3人とも」

「冬夜さんの仰ることはよく分かりません」

「愛莉は昔北風と太陽作戦という言葉をよく使っていたね?」

「ええ、冬夜さんを起こすにはそれが最適だったから」

「今回も同じだよ」

「え?」


 愛莉は悩んでいる。


「頭ごなしにあの子を叱っていてもあの子は別の手段で困らせようとするだろ?『これはいけない』じゃない。その行動に至った過程を注意するべきだと思った」

「……それで、あの子に欠けている想像力を指摘していたのですか?」

「天音は無邪気で無垢だ。だから思ったことをそのまま実践してしまう。だけど頭は良い。今頃僕の言ったことを理解して反省しているよ」


 やったことを注意するべきではなくどうしてそう思ったのか?その結果何をもたらしたのか?これからどうするべきか?

 それを考えるヒントを与えてやればいい。あの子たちならそれが理解できるよ。

 愛莉にそう説明する。


「冬夜さんは子供たちを信頼しているのですね」

「親が子供を信用できなかったら誰があの子たちを信用してやれる?そう思っただけだよ」

「冬夜さんの言う事は分かりました。私も間違っていたのかもしれませんね」

「それは違うよ愛莉」

「え?」

「愛莉が僕に相談したのは愛莉の手に負えないからだろ?」

「そうですね。父親にきつく叱ってもらおうと思って」

「だから北風と太陽を使わせてもらったんだ」

「……なるほど。そういうことですね」


 愛莉は納得したようだ。

 母親が教育に迷いが出ていたら父親が支えてやればいい。

 愛莉パパが言ってた。

 だから愛莉の意思も尊重しつつあの子たちを説得する方法を考えた。

 天音も馬鹿じゃない。今頃反省しているはずだ。


「冬夜は子供に甘いと思っていたが、ちゃんと考えているんだな」


 父さんが言う。

 両親は天音たちの事に関してはあまり関与しない。僕と愛莉で考えて育てていくべきだと言っていた。

 3人とも良い子に育ってる。

 それは愛莉の手腕だ。

 だけど今愛莉は基本的な事を見失っている。

 いつもの愛莉なら出来たこと。

 それを僕が変わってやっただけ。


「話は以上にしようか?愛莉一人残すのは残念だけど誠達にも声をかけてみよう。海開きも近いし」

「わかりました。手配は私がしておきます」

「愛莉の水着姿見たかったな」

「もう!私もそんなに自慢できる年じゃありませんよ」


 愛莉はそう言って笑ってた。


(5)


「おい!お前の兄や姉のせいでプールがだめになった挙句エアコンまでつかえなくなったぞ!?」

「どうしてくれるんだよ!」


 そう言うのは小泉優と小原要、それに如月天。

 私と瑞穂と恋は困っていた。

 兄の不始末を妹におしつける。

 理不尽な行動だ。


「こいつらを責めてもしょうがないだろう」


 小泉奏が言う。

 仲間割れをしているようだ。


「なんだ奏。好きな女でもできたのか?」


 3人が冷やかす。


「そんなんじゃないよ。ただいい加減学習しろよといいたいだけだ。優」


 奏が言う。

 3対1数的不利だ。

 だけど4人の中に亀裂が生じたのはメリットかもしれない。

 私達は様子を見ていた。


「でもこいつらの身内のせいでこの事態になったのは事実だろ!?」

「だったら、本人に直接言えば良い!俺はいい加減馬鹿馬鹿しくなったぞ!」

「奏はこいつらに仲弱み握られたのか?」

「そんなんじゃねーよ!」


 大原兄弟の兄弟喧嘩が始まった。


「だいたい女子の味方してダサいと思わないのかよ!」

「兄に逆らえないから妹に八つ当たりしてる方がダサいと思うね!」


 平行線のまま口論は続く。

 そんな二人をみていて天はしらけたらしい。

 1人で帰ろうとしたが立ち止まっていた。

 昇降口で待ち合わせしていた姉様達が様子を見に来たらしい。


「ほう?俺達に文句があるのか?聞いてやってもいいぜ?」

「こっちも暑さでイライラしてたんだ。一暴れくらいしても構わないぜ。天音たちは下がってろ。女子抜きで十分だ」

「私達に文句言えないから妹に文句を言う根性は叩き直さないと気が済まない。私は混ぜてもらうぞ」


 粋さんと遊さんと姉様が言う。

 後ずさりする要と優と天。

 だけど、待ったをかけたのは意外な人物。


「こうなったら、度胸試しをやるしかないだろ?」


 天音さんが言った。


「あれやるのか?」


 粋さんが言う。

 あれって何だろう?


「私達に逆らうくらいの度胸はあるんだ。それくらい簡単だろ?」


 水奈さんが言う。


「決まりだな。家に帰ったら水着持って那奈瀬川の公園に来い!来なかったら明日ぶっ飛ばす!」


 天音さんが一方的に約束を決めた。

 那奈瀬川の公園には小さな人口の川がある。

 そこで水遊びをしようって魂胆なのだろう。

 そう思っていた。

 そして私達は公園に行った。

 女子たちは私服の下に水着を着ていた。

 そして皆が集まると人口の川に向かう。

 すると天音さんが言う。


「どこ向かってんだよ?こっちだついてこい」


 天音さん達が向かった先は文字通り川だった。

 天音さん達は河原に着くと服を脱ぎだす。


「お、おい。ここって立ち入り禁止区域じゃないか?」


 要が言った。

 だが、4年生組はにやりと笑って言う。


「だからどうした?」と。

「このくらいやる根性も無いで私達に歯向かうなんざ百万年早い!」


 天音さんが言う。


「面白そうだな」


 姉様が飛び込むと、次々と飛び込む4年生達。

 そして楽しそうに遊んでいる。

 そんな姉さんたちを見ると私も遊んでみたくなった。

 恋と瑞穂も誘うと3人で川に入る。


「繭達は浅瀬にいろ、あまり奥に入るなよ!」


 姉様が言う。

 そんな私達を見てる天達。


「どうした!?恋や瑞穂もやってるのにお前らチキンか!?」


 粋さんが言う。

 最初に飛び込んだのは奏だった。

 それを皮切りに次々と川に入る男子達。

 気が付いたら皆ではしゃいで遊んでいた。

 気分が高揚していた。

 そして天がやらかした。

 うっかり奥に入ってしまい溺れる天。

 それを見てヤバいと思った粋さんが用意していた浮き輪を天に向かって投げる。


「掴まれ!!」


 天が必死に捕まる。

 それを粋さんが引っ張る。

 しかしそんな様子を見ていた大人達が駆け付ける。

 大人達に叱られ学校に連絡され私達は学校に連行される。

 親を呼び出され、親は頭を下げてそして私達は叱られた。

 帰る頃には日が暮れていた。


「待てよ!」


 帰ろうとする私達を天音さんが呼び止めていた。


「スマホ出せ」


 大原兄弟と優と天に言う。


「同じ修羅場をくぐったらもう仲間だ!連絡先交換しようぜ」


 天音さんはそう言ってにやりと笑う。

 4人はセイクリッドハートというグループに招待された。


「気になる奴がいたら仲間に入れて良いらしいから増やせよ」


 水奈さんが言う。

 そう言って私達はそれぞれ帰った。

 帰りながらも叱られてた。

 家に帰るとスマホを見ていた。

 大原兄弟と小泉君は兄妹を誘ったらしい。

 どんなグループなのか分からない。

 だが、少なくとも今日のようなドキドキが味わえるのかな。

 波乱の一学期がもうすぐ終わろうとしていた。

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