ヤクルトを買いに
手術が終わって3日目。もう病室は自由に動き回り、食事の返却にパントリーへ行ったり、飲み物を買いに自販機へ行けるようになっていた。
ここで今日の話題を始める前に、まずは注意喚起。食事をしながらこれを読んでいるそこのあなたは、ひとまずこれを読むのは後回しにしておきましょう。
そう、ずばり今日の話題は「出るものが出ない」という話なのである。
手術が終わった後というのは、どうしても便が出にくくなりやすいものらしい。手術前に腸をキレイにしてしまうからなのか、お腹の傷が気になって力むのが難しいせいか、はたまた別の要因があるのか。
とにかく出にくくなるし、看護師さんたちにも出たかどうかを心配されるので、結構大事な話なのである。
で、またも今回初めての出来事なのだが、3日目になっても便が出なかった。
これには心当たりがあって、それまでの2回の手術の時は、毎日ある特定の乳酸菌飲料を飲んでいたのである。
もちろん手術の時以外もずっと、高校生くらいの頃から飲み続けているものだ。そして飲んでいる限り、毎日だいたい同じ時間に便が出る。
これを飲むのをやめると、2日後くらいからちゃんと出なくなるのだ。
入院してから6日目、効力はとっくに切れているだろうし、そもそも下剤を飲んで排便したときに菌も出てしまっただろう。いくら頑張っても出ない。
病院の対応としては「下剤を飲んで出すように」と言われたが、出ない原因はこの乳酸菌だという確信に近いものがあった。
幸いもう、傷もふさがっているし、一人で結構歩くことができる。そしてこのB病院の一階には、少し大きなコンビニがある。
そう、つまり市販の乳酸菌飲料を探しに行ったのである。
エレベーターを使って1階まで降りると、そこからぐるーっと回り込むようにして建物の正面側のホールへ。そこは入院しにきた患者さんや家族が待つ場所だ。コンビニはその奥にある。
しかしホールに来たところで立ち止まりそうになった。
ここまで買い物に来る入院患者さんは少ないのか、私のようなパジャマ姿の人間は一人もいない。みんな外を歩く格好の人か、看護師さんたちばかりだ。
急に恥ずかしくなったものの、ここまで来て回れ右はしたくない。私はそのままコンビニへ入った。
幸い探し物はすぐに見つかった。
もちろんいつも飲んでいるものは無かったが、お高くて普段なら買おうとは思わないけれど、今こそ飲みたいもの、ヤクルト1000があったのだ。
そそくさと買って部屋に戻ると、部屋の冷蔵庫にしまった。そしていつも通り、夕食を終えてシャワーを浴びた後、グビグビと銭湯のコーヒー牛乳のように飲んだ。
結果は翌朝すぐに出た。二重の意味で。
力む必要もなく、いつも通りの時間に出て、お腹に溜まっていた何かがスッキリ無くなるのが分かった。
やはり私の腸には、乳酸菌の力が必要だったのだろう。
乳酸菌飲料を作っている会社様方、どうか末永く作り続けてください。あと乳酸菌様、間違っても滅んだりしないでください。
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