手術当日!……あれっ?

 いよいよ手術の日がやってきた。

 この日は下剤で腸をキレイにしておいて、あとは手術が始まるまで飲食なしだ。

 ちなみに私の手術の予定は午後3時。朝から絶飲食なので、空腹が結構辛い時間だ。


 朝のうちに出るものは出たので、その後は指示通り手術着に着替え、家族を待った。

 ここまでの3日で3クール(3か月かけて放映されるアニメや映画の、その3か月分をセットで1クールと呼ぶ)のアニメを半分以上見終えていた。そろそろ見続けるのもしんどいな、と思ったところで夫と母が来てくれた。


 夫とは久しぶりに顔を見られてお互いに安心したし、3回目になる母は慣れた様子ですぐに座ると、文庫本を開いた。来られるのは予定の30分前なので、それからの時間は私と夫が話せるようにしてくれたようだ。


 具体的に何をどう話したのかは覚えていない。けれど夫は、多少慣れて落ち着いている私よりは、少し心配そうだったし、何度も元気づけるような言葉をくれた。

 来る途中に買ってきたというギターのピックを一つくれて、そこに描かれていたイラストと同じように「ぐっ」と親指を立ててこぶしを握ったりもした。


 しかし話すことがだんだん尽きてきて、私は「おやっ?」と思い始めた。

 時計を確認すると、予定の時刻をかなり過ぎているのだ。

 これまでの2回の手術では、予定より早く呼ばれることはあっても、遅くなったことはない。

 いくら待ってもお呼びがかからず、最終的に予定時刻の1時間後に、夫がナースステーションに確認に行った。すると前の手術の人がまだ終わっていない、という話だった。


 びっくりしたものの、これまでのコロナの影響らしきものを考えれば、ごく当たり前のことだったかも知れない。

 それから程なくして呼ばれ、私は手術室に入った。


 手術室は以前より若い人が多い印象で、人数も多かった。以前より明るく、安心させるような色をした部屋になっていた。その中を手を引かれて行って、手術台に乗る。

 以前と比べると、患者が不安にならないよう、本当にスタッフは優しかった。一人一人挨拶もしてくれて、いよいよ手術だ、という感じになった。


 まずは背中に入れる麻酔の管を通し、右手からも冷たい麻酔が入ってくる。

 すると急速に眠気がやってきて、私の意識は完全に落ちていく。

 こうして手術が始まった。

 次に目を覚ますときは、手術が終わった時だ。


 しかしこの時は、その後に仰天するようなことになるとは思っていなかった。

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