入院当日超ドタバタ(3)

 話は一通り理解したものの、私はすぐに「では手術の内容を変えましょう」とは言えなかった。

 文字通り混乱していたのもあるし、私自身が考えていたデメリット、再発に関する問題もある。


 B先生からは、本来私のような年齢の場合はまず残すこと、悪い部分が見つかった場合にはその都度手術などの対応をする事、というのが一般的だとも言われた。

 しかしそう言われても、自分にはあまり体力が無いのは分かっている。何度も手術を受けるかも知れない、というのはとても不安だった。


 できる事なら夫や母に相談したい。

 そう伝えたものの、私は既に入院済みで、家族も帰宅している。これ以降は手術日まで家族は来られない。

 どうしたものかと悩んでいたら、B先生はそれなら電話をしますよ、と言い出した。

 私にしたのと同じ内容を、夫と母にきっちり電話で説明してくれるというのだ。


 私はとても驚いた。

 どこの病院でもそうだが、お医者さんというのはとても忙しい印象だ。何か患者側の問題で話が進まないと、先送りにして患者からの答えを待つ、という対応が多かった。

 それがこのB先生はまるで違った。


 私から夫に、その後母にそれぞれ電話を掛けると、宣言通り一から十まできちんと説明をしてくれたのだ。

 一人にかかった時間はおよそ20分。私に説明をしてくれた時間も含めると1時間にもなった。

 内容は一切省略することなく、専門の知識がなくても分かるように丁寧な説明を、だ。


 先生の本気度はビシビシ伝わって来た。

 私が考えるデメリットよりも、専門の知識や経験のあるB先生から見たデメリットは、きっと厳しいものなのだろう。

 なんとか二人と私を説得して、この手術の内容を変えよう、という思いの強さを感じた。


 電話を内容を聞いて、夫は薬のデメリットについては全く聞いていない、と驚いていた。しかし母の方は、実はその薬を利用していて、副作用でさらに薬を飲む必要がある、という事まで知っていた。

 知っていて、それでも再発の不安を恐れる私の気持ちを優先してくれていたらしい。


 電話が済むと、B先生は「もう一度ご家族と相談して、明日までにどうしたいか決めてください」と言ってその場を後にした。

 私は「長時間ありがとうございます」と頭を下げた。


 この後、更に二人から電話が来たものの、私の気持ちはその頃にはほぼ決まっていた。

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