入院当日超ドタバタ(2)
入院日の午後、検体という名の唾液も出し終わり、一息ついて1時間後くらいだったろうか。
「しらすさん、すみません。お話したい事があるんです」
と言って現れたのは、当日に手術をしてくれる先生だった。
ここで分かりやすく書いておくと、最初にB病院を受診した時の先生がA先生、この執刀医であり入院中の担当医はB先生と、全く違う先生だ。
B先生は少し焦っているような、けれど本当に深刻な話がある顔をしていた。
何事だろうと姿勢を正した。すると、ここで初めて聞く話が始まった。
既に「手術の方向性を決めよう」で書いた通り、A先生には「問題のある臓器を全て取る」という話には反対されていなかった。
むしろMRIの写真を見た時も「残すと言ってもこれだけ大きくなってると……」という、温存が難しいことを匂わせるような言い方だった。
そして、仮に全て取ってしまった場合、その器官の作用を補う薬があって「それも簡単に処方できるよ」と言われていた。
つまり先に書いた通り、その時点で問題だったのは、手術方法を開腹にするか腹腔鏡にするか、という部分だけだった。
これに対してB先生は、問題の臓器を全て取ってしまうという手術内容そのもに問題があると言っていた。
私の手術内容は、医師同士で情報を共有したり話し合いをする、カンファレンスという場で問題になったらしい。
問題のある臓器を全て取る、という選択は、ひとえに私が再発を望まないためだ。
しかし、B先生が問題にしていたのはその後だ。当然ながらA先生が言った通り、薬を貰う事で補うのだが、これを続けるとあるガンのリスクが年々高くなっていくという。
しかもこの先数十年単位で飲み続ける薬だ。最終的にどれだけのリスクがあるか、それを考えると無視できない事になる。
それにガンだけではなく、他の様々な不調の原因にもなるそうだ。だからと言ってこの薬を止められるかと言えば、無いものは補う必要があるのでやめられない。最悪の場合はガンのリスクを背負いながら、常に不調と闘うことになる。
私は正直、かなり驚いた。A先生からは全く聞いていない話だ。
B先生は出来る限りの言葉を尽くして、健全な臓器は残すようにと訴えた。
カンファレンスの場でも3人ほど反対者がいたそうで、
「私も反対なんです」
と真剣な顔で言われた。
そのB先生の顔を見て、私は混乱しながらも、事の重大さだけは強く感じた。
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