いざ引っ越し

 MRI検査が空振りになった翌々日、荷物が引っ越し先に届いた。

 両親が揃って引っ越しの手伝いに来てくれて、彼氏と4人で作業をすることになった。


 荷物の受け取りの時もそうだったけれど、引っ越し業者の人たちは本当に手際がいい。私では床から浮かせるのが精いっぱいの重い荷物を、うんっと腕に四角く抱え上げてスタスタ持って行く。

 梱包するのもそれを解くのもあっという間で、手伝いをする隙すらない。


 重い物を持ち上げると、お腹が圧迫されて苦しかった私には、ほとんど天の助けだ。


 そんな引っ越し業者さんにも解決できない問題が発生したのは、私の計算ミスが原因だった。


 押し入れに入れる予定の衣装ケースを、私は同じ幅の物が2列に並ぶと思って買っていた。ちなみにこの衣装ケースは引き出し式のもので、そのままタンス代わりとして使える。

 しかし実際に入れてみたら、押し入れの扉の蝶番のぶん、隙間を開ける必要があった。そこを開けておかないと、ドアに引っかかって引き出しが出なくなるのだ。

 これを失念していた私は、横幅いっぱいで計算してしまっていた。そのため、2列用意していた1列分、5ケースも入らなかった。


 これには困った。土壇場でこんな事になるとはさすがに予想していなかったので、しばらく思考停止していた。

 けれど冷静になってみたら、そもそも空きケースが2つあった。ついでに収納できるものがあればと、余分に買っていたものだ。これは実家に持ち帰ってもらうことになった。

 残りの3ケースはどこに入れるか迷っていると、彼氏が「とりあえずここに置こう」と本棚の横に置いた。すると意外にも、本棚と同じ高さと幅で、ぴったりそこに落ち着いた。

 予想していたより若干部屋は狭くなったものの、無事にこの収納問題は解決した。


 山ほどの本も、多少本棚からはみ出るかと思っていたら、意外にすっきり書棚におさまった。しかも箱詰めの時は一日一箱で四苦八苦したのに、収納する時はバケツリレー方式で移動したので、あっという間に片付いてしまった。


 二人きりだと夕方か翌日まではかかりそうだ、と思っていた引っ越しは、そうして昼過ぎには綺麗に終わっていた。


 とうとう二人暮らしの始まりだ。

 が、腰を落ち着けるのはまだまだ先だった。



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