引っ越しだ!MRI検査だ!……ってあれ?

 12月は色々と慌ただしい月となった。

 まずは引っ越しが決まっていたので、必要なものを買いに行ったり、荷物を箱詰めしたり。彼の家には台所用品がほとんど無かったので、一式買い揃えて行ったり。


 一番かさばったのは衣類だ。実家暮らしの気楽さで、着ない服の整理がついていなくて、衣類はタンスから壮大にはみ出ている。けれど引っ越し先の私の部屋は、クローゼットなどがない。

 代わりに少し大きめの押入れがあるので、そこに衣装ケースを入れることにした。それでも入りきらないので、着ない物はがっさり処分した。


 重さの問題で言えば、一番大変だったのが書籍類だ。

 これだけ持って行きたいんだけど、と見せた時、彼が「ん、分かった」と二つ返事で了承してくれたのは、双方ヲタクだったからに他ならない。普通の人なら「半分処分できない?」なんて言われそうなくらいあった。

 部屋の広さの問題で、実家で使っていた本棚は床面積を取ってしまうので、新たに使いやすい本棚も買ってくれた。非常にありがたかった。


 ギリギリまでかかって全ての箱詰めを終え、引っ越し業者に荷物を渡した翌日、とうとうMRIの日がやって来た。


 その日は朝から冷え込んで、私はなるべく体を冷やさないようコートの下に二重に服を重ねていた。それでも寒暖差のせいか鼻水が出始めていた。

 内心でこれは困ったなぁ、と思っていたら、病院に着くなり鼻水の事を訊かれた。

「今日は急に冷えたので、たぶん寒暖差のせいです」

と答えたものの、とりあえず熱を測ってくださいと言われた。

 すると間の悪い事に、37.8度の熱が出ていた。


 この熱なのだが、実は帰宅した時には平熱に下がっていた。なので本当に間が悪かっただけなのである。その頃はよく微熱が出ていた。それがたまたま高く出てしまったらしい。


 しかしやはり検査は断られた。

 鼻水は少量ながら止まらないし、37.8度は微熱とは言いにくい。MRI検査はスケジュールに余裕が無いので、先にPCR検査をしてそれからMRI検査を、なんてわけにもいかなかったのだ。


 熱を測りに来てくれた先生は、ちょっと相談してきますと言って30分近く帰って来なかった。MRI検査を受けるという、ともすれば命に関わる状態を考えて、何とか受けられるように説得してくれていたのだと思う。

 結局は予約を取り直してくださいという事で、また一か月先になってしまった。けれど、その先生の行動がありがたくて、責める気にはなれなかった。


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