最初の受診!……で問題発生

 最初に向かった病院は、家から徒歩10分ほどの距離にあるA病院だった。

 そんなに近くにあって、なぜ異変に気付いた9月にすぐに受診しなかったのか、と言われれば、やはり暑かったからである。

 私は実家暮らしで、自分の車を持っていなかった。病院は待ち時間が長いし、長時間家族の車を独占するのは、行き先が近所であるほどはばかられる。

 そんなわけで、行くなら徒歩で、と思って涼しくなるのを待っていたのだ。


 結果として行ったのは、風の冷たい10月半ばだった。


 A病院では受付で、問診票と共に、コロナの感染や感染者との接触がないかを調べるシートを渡された。

 ここで初っ端から問題が起きた。


 実はこのA病院に来る一週間前、私は風邪を引いて高い熱を出し、かかりつけの内科でPCR検査、つまりコロナに感染していないかを調べていたのだ。

 結果は陰性で、その後すぐに熱も下がったため、感染はしていなかったのだと思う。

 ただ、コロナの症状としてどこの病院でも挙げられるのが、鼻水が出ていないか、というものだ。


 私は春も秋も花粉症が出ていて、毎年アレルギー薬が手放せない身だ。

 薬を飲んでいても、鼻水が出る時は出る。完全には止まらないし、元々小さい頃から鼻炎になりやすいので、ちょっとしたことで鼻水が止まらなくなったりする。

 9月10月はちょうど稲刈りの季節だ。当然花粉症で鼻水はよく出ていた。


 この鼻水が大いに災いした。

 風邪を引く前から花粉症の症状はあったし、PCR検査も陰性だったと説明したが、彼氏が県外の人だったため、

「県外者との接触あり・鼻水あり・一週間前に高熱」

 と、疑わしい部分が多いという話になってしまった。


 ただ、これだけなら再度検査をすれば問題にはならなかったところである。

 更なる問題は、私が徒歩だった事だ。


 このA病院、こういう場合にはPCR検査を受けてもらう、と言いながら、その間待機する部屋はまるで用意がないという。

 検体を取り、検査結果が出るまでの30分から40分、車がないならずっと外に出ていてくれと言うのだ。


 椅子の一つもない、風の冷たい日なのに風よけもない屋外に、である。

 無茶を言わないでくれ、と言うのは割と当たり前だと思う。コロナ陽性の疑いありと言うなら、なおさら寒い屋外に待たせるなんてありえない話だ。


 ちょっとした押し問答になった。けれど受付を待つだけで既に30分は待っていたので、私はかなり疲れていた。

 結局帰るしかないと決めた私に、受付の人はこう言った。

「鼻水が止まってからまた来てください」と。


 この言葉で、次の受診は更に一か月先になった。

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