第2話
僕達は森へと歩みを進めていた。
ある日立ち寄った、ミレニアという街でとあるお願いをされた。
「勇者様、私達は今、魔獣達に畑を荒らされて困っているのです。なんとか、魔獣達を倒し、我々の畑を守ってはいただけないでしょうか。」
僕は勇者だ。
ならば、二つ返事で請け負うべきだろう。
しかし、気になるコトもあった。
王都ではそんな話は聞かなかった。
それに、それを言った村長の目が怪しく輝いていた気がする。
畑を見て回ると、魔獣達は森の中に潜んでいるであろうコトがわかった。
なので、僕達は森へと向かうことにしたというわけだ。
ちなみに、今のメンバーを紹介しよう。
魔道士のエリカ・レオリー。
剣士のフェリティア・メッツァ。
賢者のイリス・マーティー。
偽勇者の僕、サイジョウ・アスカ。
この四人で冒険をしている。
しかも全員、僕のコトを好きだ。
「イリス、フェリティア、エリカ、気をつけて、イヤな予感がする。」
畑を荒らしただけの魔獣にしては、あまりにも魔力や圧力と言ったモノが大き過ぎるのだ。
僕は、ミスリルの剣に魔力を流す。
少し発光するが、許容範囲だ。
むしろ、襲われた時に戦う準備ができていない方がマズイ。
「お前さんが、勇者様とやらか?村の者の言うとおり、ここに来たな。」
森の奥から現れた男からの圧力が凄まじい。
多分、僕以外の3人は満足に動けないだろう。
「そうだけど、なんかようかな?」
「お前に恨みはないが、俺の未来のタメに、死んでもらおう。」
瞬間、僕の眼前に男の剣が迫る。
目で追うコトすらできなかった。
僕の剣がかろうじて、防御を成功させる。
魔力で目を強化すれば、影くらいは見えるようになる。
早過ぎて本体は見えないが、何とかハッタリでやりきるしかない。
鋭い音を立てて、剣が何度も何度もぶつかる。
僕は勇者じゃない。
物語の主人公ではない。
主人公を演じている一般人にはいきなり強くなる等のスキルは持ち合わせていない。
「イリス、タイミングを見て僕に付加魔法を使って!フェリティアはエリカの援護!エリカ、最悪僕を巻き込んでもいい。最大の魔法を!」
「あのさァ、恥ずかしくねぇの?男なのに女に頼ってさ?」
僕の剣が見えもしない男の剣を防御しきっているのは理由がある。
幻影とも言える魔法を使っているからだ。
魔法によって、隙があると思わせた場所に剣を配置しておく。
これで、後どれだけの剣を防げるだろうか。
タイミングを見て、戦い方をシフトさせなければいけない。
僕はワザと本気で剣を叩きつけて、距離をとる。
と、同時にイリスの付加がとんでくる。
また少し、男の剣が見えるようになる。
これなら、できるだろう。
二つ目の僕の切り札。
幻影だと気付きはじめている男なら僕のどこかに幻影を探すだろう。
しかし、ここからは幻影は使わない。
使うのはマジックだ。
元の世界での趣味はマジックだった。
剣があるはずのところから、剣がなくなり、剣がないはずのところから短剣が現れる。
上に飛ばしたり、地面に突き刺したり。
戦いながら、間合いを作らせないように、こちらから攻める。
しかし、これにも限界がある。
もって、十秒といったところか。
はじまりと終わりは決めてある。
なら、道筋を無理やり作ってやればいい。
男が戦いを挑んでくる。
僕が何とか時間を稼ぐ。
エリカが魔法で倒す。
三枚目の切り札を切る。
今度は魔法を使う。
相手の攻撃の瞬間に剣を発光させる。
アホな技だが、意外と効果があるのだ。
しかし、これももって十秒。
というか、見てたら五秒もたない。
すぐに切り替える。
四枚目の切り札を完成させる。
防御しながら描いた魔法陣に魔力を流す。
蔦が男の体に纏わり付く。
そして、男の魔力を吸収して更に蔦を強くする。
そんな、僕の独自魔法。
「エリカ!」
「任せなさい!」
エリカの魔法が暴走する。
『フェイトスパーク』というなんか中二病くさい名前のエリカの最強魔法。
それをワザと暴走させるコトで、一段階上の攻撃力にする。
そして、暴走させる欠点は…。
範囲の指定が出来ないコト。
要するに…。
巻き込まれるかもってコト。
案の定、僕の体にも電流が走った。
そして僕は気絶した。
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