偽勇者の冒険譚

完成された欠陥品

第1話

ある日、僕は異世界に転移した。

この世界には魔王がいて、人間の国と魔族の国の戦争が数十年続いているということだった。


しかし、この世界には魔王を討つことができるような存在がおらず、徐々に人間たちの領土を奪われ、住む場所を追われていった。

そして、かつての自分の夢を思い出した。


僕は昔、勇者になりたかった。

強くてカッコよくて優しいそんなヒーローのような幼馴染を見て、そんな幼馴染と並び立てるような男になりたかったのだ。そんな人間と並び立つには物語の勇者になるしかないと思っていたのだ。


だから…


自分は勇者だと名乗った。

異世界から現れた僕が勇者だと名乗れば、誰もが信じ力を貸してくれた。

我こそは強者と云う者が冒険に力を貸してくれるといってくれた。だから、その中から女ばかり選んで冒険に出た。



僕は、異世界転移モノでよくあるような、チートは一切持っていない。

だから、戦う力なんてものは一切無かった。だからこそ、僕は努力した。幸い恵まれた装備を持っていたから力をつけることができた。




でもいつか、僕は魔王の前に立ち戦うことになるだろうし、命を落とすことになるであろうことはよくわかっていた。


そして、信じていた。勇者になれなかった僕という勇者の後を継いで本物の勇者が現れるコトを。



僕の偽りがどれだけ持つのかわからないけれど、僕は今日も仲間を連れて世界を歩む。

そう、あのころ夢見ていた仲間と共に異世界を救う旅に。




神は僕を見て笑っているだろうな。

偽物ごときにに何ができるのだと。


そして人は真実を知った時に言うだろう。

あの人はなんか胡散臭かったし、信用できなかったと。自分たちはあの男に騙されていたのだと。



都合のいい人間でいいから、勇者という肩書きのタメにありとあらゆる雑用をやろうと思う。それがこの世界の人を騙している自分にできることなら。




それで勇者と名乗れるなら。

それで僕を笑わないでいてくれるなら。

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