迷子になったボク

クロノヒョウ

第1話



「怖いよぉ」


 目が覚めるとボクの周りには知らない外国人がたくさんいた。


 みんな背が高くてスラッとしててとってもカッコ良くて。


 でもみんな何を話しているのか全然わかんないから怖いんだよ。


「うわっ」


 ボクが怯えていたのに気付いてくれたのか、通りかかった可愛らしい女の子がボクの手を引っ張った。


「ち、ちょっと、ここはどこ?」


 女の子はボクをものすごく人が多くて騒がしい所に置き去りにした。


 ここには学生服を来たお兄さんお姉さん、サッカー、バスケ、野球とスポーツをする人、絵を描いてる人、なんだか音楽まで聴こえてきた。


 みんな楽しそうで生き生きとしている。


「おっ」


 今度は中学生くらいのお兄さんがボクの手を引っ張った。


 力が強くて転んでしまったボクに声をかけてくれたのは優しそうなおじさんだった。


「大丈夫かい? 坊や」


「うん、ありがとう」


 見るとそこはとても静かで大人な雰囲気のある場所だった。


「迷子かい?」


「うん、目が覚めたら知らない所にいたんだ」


「まあ、よくあるよな」


 おじさんはそう言いながら肩をすくめた。


 よく見るとここにはサラリーマンやOLさん、警察の人もたくさんいた。


「わあっ!」


 でも一番びっくりしたのは死体がいっぱいあったことだ。


 ボクはまた怖くなって震えていた。


「はは、ここはサスペンスコーナーだからね」


 おじさんがそう言って笑った時、ボクの体がふわっと宙に浮いた。


「あら、誰がこんな所に置いたのかしら」


 ボクはエプロンを着けたお姉さんの胸に抱かれ、ようやく家に連れて行ってもらえた。


「やあ、お帰り」

「お帰りなさい」


「ただいま」


 くまさん、ぞうさん、うさぎさんたちはボクが自分の棚に入ると笑顔で迎えてくれた。


 やっぱり自分の場所が一番いいや。


 ボクはようやく安心してお客さんを待っていられる。


 そう、ここは絵本も洋書も漫画も小説もある、町の小さな本屋さん。


 手に取った本はもとに戻してね。





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迷子になったボク クロノヒョウ @kurono-hyo

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