第12話 かつての想い、テスト

 突然の告白だが、俺には小さい頃好きな人がいた。

 それは四、五歳のころ。

 最近夢をみて思い出した。


 けれど残念なことに顔や名前が思い出せないでいた。

 なになに?本当にそれは好きだったのかって?

 確かに、その人についてあまり覚えていないのは確かだが、確かに好きだった。

 ただなんせ幼い頃だ。

 その好きというのは、恋愛的な好きというよりは、友達?いやこれも違う。

 家族とかそういう感じの好きだったはず。


 …そうだ。妹のように感じていたんだ。

 その子は弱かった。

 それは、肉体的にという意味でも、精神的にもだ。

 だから僕はその子を守りたかった。

 当時の俺はそう思っていたはずだ。


 …なんで忘れていたんだろう。


 ほんの少しの間だったけど、その子とは仲良くできてたと思う。


「今は元気にしてるかな?」


 生きているのか、死んでいるのかすら分からない。


 …本当に俺は覚えてないことばかりだな。



 そう考え終えて、センチメンタルな気分から解放された俺こと吉野結には疑問がある。


 最近のくまたちの様子が変なのだ。

 やけに警戒?というかなんというか、それに近いことをしてるなと思ったら、放課後あとをつけてきたりとストーカーまがいなことをしている。


 …気づいていないとでも思っているのだろうか?


 まぁ、この一週間のくまたちの行動に疑問を抱くことはあったが、対して問題でもないので放っておくことにした。


 そこの君、覚えているだろうか?

 花が来月にはテストがあると言っていたことを。


 そう、その時が来てしまった。

 今日が前期第一回定期テストの日なのだ。

 猛烈に緊張?というか、大丈夫かな?と心配している。


 普段の俺なら何も思わずに問題を解いて余った時間は寝ているのだが、今回それは出来ない。

 …思い出してほしい、俺がこの一か月何をしていたのかを。

 えっ?花とデートとかいうお楽しみタイムを満喫していた…

 まぁそれもあるが、勉強会だよ。

 していたじゃないか、先輩と花と一緒に。


 今回テストをする前日二人に言われたことがある。


『結君明日は頑張ってね』


 先輩からは無難な応援。花からは…


『ゆ~い、わかってるよね?』


 と少々ドスが利いた声で応援もとい圧をかけられた。

 …何がわっかってるよね?なんだろう…

 私たちが教えたんだから低い点数とるなよ木偶の坊ということだろうか…


 何がともあれ低い点数をとったらなにをされるか分からないので、いい点数をとれるよう頑張っている。

 …まぁ、それがなくとも今回は頑張ると決めている。

 花はもちろんだが、葵先輩にもめちゃくちゃ感謝しているからだ。

 口では復習になるからいいと言いつつも実際は教えながら自分の勉強もしないといけないのだから大変だっただろう。

 だから、先輩の好意を無駄にしないためにも頑張ると誓っていた。


 定期テスト一日目、最初の教科は物理。


 そうして、吉野結vsテストが幕を開けた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る