第11話 第一回、吉野大捜査

 よう皆。俺の名前は熊田流星。友達からは『くま』と呼ばれている。

 …まぁそんなことはどうでもいい。


 さて皆に聞きたい、最近結の様子が変わったと思うのは俺だけだろうか?


「いや、我も同じである」


「拙者も同じく」


「…確かに最近変わったな」


 今俺はとあるカラオケで緊急会議を行っていた。

 議題は『最近の吉野結』だ。


 最近の結の様子?がなんか変なのである。


「どこか余裕ができてきたような気がする…」


「放課後すぐにどこかに行ってしまうでござる…」


「…女でもできたんじゃないか?」


 緊急会議には、俺を含め四人が参加している。

 柔道部でたくましい筋肉を持つ俺こと熊田流星。

 アニオタで一人称が『我』と若干中二病な高倉裕斗。

 なぜか分からんが一人称が『拙者』でござる口調と変わり者の忍野春。

 おそらくこのメンバーの中で一番頭がよく常識人の遠藤楓。


 やはり楓からは鋭い意見が出てきた。


「女か…」


 最近の結は放課後すぐにどこかに行ってしまう。

 それだけならまだいいのだが、授業中寝なくなったのだ。

 驚くべき変化である。


「確かに女ができていたら辻褄があうな…」


「おっ女でござるか?」


 なぜ辻褄が合うのかは疑問だが、女というのはあっている気がする。


 …女もとい彼女。


「羨ましいな…」


「誠に遺憾でござる…」


「なぜ、結にできて我にできないのだ…」


「いや、なんでもいいだろ」


 そう羨ましいのだ。

 これは楓を除いた俺らの共通の気持ちである。

 …ちなみに楓も彼女持ちだ。

 …ギルティー。


「それにしても、相手が気になるな…」


 会議の結果は決まった。

 口に出さずとも分かる。俺らは同士なのだから。


 最近の結の変化は彼女ができたこと。

 彼女ができた、なら相手は?


 今俺らがするべきことは


「「「結の相手の特定だ(でござる)!!」」」


 こうして俺らの調査が始まった。


「ほんとにやるのかよ…」


 楓は口ではそういいつつもどこか楽しそうであった。

 ふっ、やはり楓も俺らの友達だな。


 それから一週間、調査は筒がなく終わった。

 捜査は簡単だった。ただ結の後を追えばいいだけだったから。

 えっ、ストーカー?…ふむふむ何も聞こえない。


 なんやかんやで捜査は終わり、俺らは打ちひしがれた。


「ふたりだと?」


 結は図書室で、二人の生徒に勉強を教わっていた。

 しかもその二人かわいいのである。

 一人はクラスメイトの西田花。

 そしてもう一人は、三年の三宮葵。


 俺らは呪った、世の不公平さを。


 ああ、主よ、我らに救いを。


 俺らはどこか現実逃避をして、神に願った。

 こうして第一回、吉野大捜査は俺らに大きな傷を残して幕を閉じたのであった。




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