第10話 いつかの再会を願って

 これは、吉野結ではない誰かの記憶。


 私は今でも思い出す。彼と過ごした日々を。

 それは今から十年以上前のこと。

 もしかしたら彼は覚えてないかもしれない。


 あの時彼が言ってくれた言葉はとてもうれしかった。

 幼いながらも確かに希望を感じることができた。


 幼少期のほとんどを自宅と病院で過ごしていた私にとって彼との思い出は宝物だ。


『ぼくは君に似合う男になりたい!!』


 幼い彼からでた言葉に私は嬉しかったのを覚えている。


『それじゃずっと待ってるから!!』


 そして返した言葉も。

 彼が当時何を思ってそんなことを言ったのか分からない。

 彼は忘れてしまっているかもしない。

 …それでもいいと思った。

 私はずっと待っているから。


 いつか、彼とまた再会できることを夢見て私は今日を生きる。


 …再開できるわけがないのは自分でも分かっている。

 そんな偶然がないことはわかっている。

 願うだけ無駄なのだ。

 それでも私は諦めることができない。


「ずっと、ずっと、待ってるからね」


 叶うはずのない再会。


 いつかの再会を夢見て私は瞼を閉じた。


 彼女は知らない。知る由もない。

 そのいつかが近いうちに訪れることなど。


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