第8話 究極の幼馴染み
唐突だが、幼馴染の定義とは何だろう。
小さい頃一定期間共に過ごしたのなら幼馴染というのだろうか?
そしたら、兄弟とは究極的な幼馴染なのではないか?
…血がつながってたらダメだって?
なら条件をたそう。
血のつながっていない兄弟ならどうだろう?
これは、身内に恋してしまった一人の少女の話だ。
私には、今も昔も悩みがある。
私が、それまでずっと家族だと慕っていた両親から血のつながりがないことを告白されたのは十歳の時のことだった。
私は、真実を話した時の両親の顔を覚えている。
そして、母が言った言葉も。
「確かに、私たちに血のつながりはないけど…咲は私たちの家族で、大切な娘よ」
父も似たようなことを言っていた。
私はその言葉に、その事実に何を思っていたのかはっきりと思い出せる。
「そしたら…にいと結婚できる?」
そう、私の当時の悩みは兄弟という血の壁だった。
私、吉野咲はどうしようもなく兄のことが大好きである。
それはもちろん家族としてではなく。
十歳ながらも確かに兄が好きだった。
真実を伝えた愛娘からでた衝撃の言葉に、両親は少しばかり…いや、大層動揺していた。
「え…えーと、それは結のことがその…好きってことであってるかしら?」
「うん」
母の質問にすぐに答えた。
それを聞いた両親はまた動揺してしまった。
それから、なんだかんだあって今に至る。
両親は、兄にこのことを話していない。
身内で、兄だけは知らない。
兄の寝顔を覗けるのは、妹である私の特権だ。
兄を起こすのも私の特権。
私には多くのアドバンテージがあった。
兄に自分をアピールする機会がいっぱいあった。
想いを伝える機会だってあった。
けれど私にはできない。
だって兄は私を妹としか見ていない。
それに、私は拒絶されるのが怖い。
今私のそばには、父がいて、母がいて、大好きな兄がいる。
私はこれで満足で、壊したくなかった。
けれど…けれどいつかこの気持ちをちゃんと伝えたい。
これが私、吉野咲、十五歳の悩みであった。
物語は動き出そうとしていた。吉野結が知らない合間に。
三宮葵も認知できていない強敵が動き出すのは遠くない未来。
これを知るのはまだ誰もいない。
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