第3話 担任と進路希望

 唐突だが、吉野結の朝は遅い。


「にい、起きろ。このままだと遅刻する」


このように毎朝、咲に起こされるのが僕の日課である。


「うーん。よく寝た。おはようさん」


「飯食え。咲もう行く」


「あいよ、行ってら」


 そう言って咲を見送った後時計を見てると、八時を過ぎていた…なぜこんなぎりぎりに起こすんだ。

その理由は簡単だ。第一に、両親は朝早くから仕事に行ってしまうこと。第二に、咲も僕ほどではないが朝に弱いことの二つが理由だ。

…今日は遅刻かな。


 その後、急いで学校に向かうも一限目のチャイムに間に合うことはなく遅刻した。

…あと何回遅刻していいんだっけ?そんなことを思いながら僕は後者に足を踏み入れた。


「連絡は以上…吉野は放課後先生のとこまで来るように。じゃ解散。」


やっと帰れると思っていた僕だが、先生の思わぬ呼び出して若干憂鬱になった。

重い足取りで職員室に向かう。

…僕なんかしったけな?全然思い当たる節がない。

職員室に入ると、担任の牧野先生に声をかけられた。


「吉野、なんで呼ばれたかわかるか?」


「…いや~、ちょっと存じ上げないですね。ハハッ」


先生の質問が答えられるず、愛想笑いをしてごまかそうとする。


「はぁ、吉野。提出物を期限までに出すことは当たり前のことだ。学生でも、社会人でも当たり前のことで大切なことだ」


先生に諭すようなことを言われ、呼ばれた理由が分かった。

そうじゃん僕。進路希望出してなかった…


「あぁ、すいません。以後気お付けます」


すっかり忘れてた。次回から気お付けようなんて思っていると、先生が訊ねてきた。


「あぁ、そうしててくれ。それで提出できるのか?」


…出せはするんだよな~、白紙でいいならだけど。


「…白紙でもいいなら出せますね」


そう言って、鞄から進路希望調査書を取り出し、先生に差し出す。


「…また白紙か。吉野は将来の夢とかないのか?」


「あったら今頃白紙で出していませんよ」


「…そうか。でももう二年だぞ。来年には受験もあるし。早く行きたい学校とか就職先を見つけないと手遅れになるぞ。」


ですよね~。でも何かしたいこととかないんですよ。


「まぁ、白紙でも悪いことはないから一応受け取っておくぞ。次からは期日までに提出するように」


はいと返事して職員室を出ようとしたとき、


「あと、進路で悩んだことや気になったことがあったらいつでも聞きなさい」


先生は最後、そんなことを言ってきた。


余談だが、牧野先生は面倒見がよく生徒からの人気が高い。かくいう僕も先生を慕っている一人である。

年齢は知らないが、男の一人や二人はいそうな先生だが、結婚どころか彼氏もいないらしい。

その理由をそれとなく先生に聞いた友達がいるのだが、そいつによると先生は酒が入るとダメらしい。

…高校性の僕にはよくわからない感覚だった。

まぁどうでもいいやと思い吉野結は帰路につく。


酒を知ったとき彼がこの友人の言葉を思い出すのは当分先のことである。








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