31話 来客は続く

 特にすることもないので線路脇にやってきたスズメをぼーっと見ていたら、また列車区のスタッフが来た。


「17号列車、お客様だよ!」


今日はお客が多い日だな。今度は誰だろう?


「17号列車!」


あ、小隊長たちだ!


「小隊長!遊びにきてくれたんですか?」


「いやいや、遊びにくる時は皆で来るよ。今日はニュースを持って来たんだ。」


「ニュース?」


「あぁ、先日の貴君の救出作戦への多大なる貢献を鑑みて、王国軍から金獅子勲章が授与されることになったんだ。」


「えぇ?勲章ですか?ボクが?」


「あぁ、詳細は分かり次第、改めて連絡するけど、今日は、授与が決まったことだけ伝えたかったんだ。」


「それでわざわざ小隊長さんたちが?」


「いや、まぁ、17号列車の点検が終わったって聞いたんで、様子を見たかったっていうのが本当の目的なんだけどね。かなりの戦いだったから心配してたんだけど、元気そうなんで安心したよ。スタッフの方に聞いたけど、問題なしだったらしいじゃないか。あれだけ大暴れして問題なしとは恐れ入ったよ。」


「城の中庭で増減車して作った新しい車体が、新品同様だって褒められましたよ。」


「ふーん。やはりキミの魔法は力があるんだなぁ。なんたって飛んだしな。」

「いきなり魔物めがけて離陸した時は肝を冷やしましたよ。」

「本当だよな。俺も寿命が縮んだよ、まったく。」


小隊長が二人でクスクス笑いながら話をしてる。


「ま、元気そうな姿を見られたので安心したよ。また、詳細がわかったら知らせに来るよ、じゃぁ。」


「ありがとうございます小隊長!」


小隊長たちが帰って行った。


タペストリーの次は勲章か。今日はいろいろもらう日なんだな。


「おい、17号列車!お客様だぞ。」


え? また? まじかよ。


列車区スタッフと一緒に歩いてくる人は誰だろう? 記憶にないけどなぁ。


「こんにちは、初めまして。わたくし、クラクトン公爵の秘書官長のロビリフと申します。」


クラクトン公爵?


「この度の貴殿の活躍に対して、クラクトン公爵から、クラクトン公爵のナイト(騎士)が叙勲されることになりました。また、クラクトン市民の救出に対してクラクトン名誉市民権と名誉市民章が贈られることも決まりましたので、そのご報告に伺いました。」


ナイト?名誉市民?クラクトン州の?結局クラクトン公爵ってなんだ??


「えぇと、正直、ちょっとびっくりしてます。そんな名誉なモノを頂けるとは、ありがたい限りです。」


「ナイトの星章と名誉市民章は車体に取り付け可能なものをご用意いたしますので、完成しましたらお持ち致しますね。」


「車体に取り付けるものなんですか?」


「いいえ、本来は胸部に付ける章ですが、列車さんの場合は列車用のプレートを準備した方が良いだろうと思いまして。」


なるほど、ブルーリボン賞とかの記念プレートみたいなものなんだな。


「あと、お願いがあるのですが、クラクトン州の観光案内に写真を載せたいのですが、17号列車さんの写真を撮らせて頂けませんか?」


いや、まじ恥ずかしいけど・・。


「・・はい、構いませんが、なんだか恥ずかしいですよ。」


パシャッ、パシャ。


何枚か写真を撮ったあと、秘書官長は帰って行った。


なんなんだ、今日は。来客3組って、新記録だな。っていうか、ボクに人が訪ねてくるなんて、前世では某国営放送の集金と、新聞の勧誘しか来たこと無かったのに。


流石に今日はもう来客はないだろう、と思った瞬間だった。

「おーい、17号列車!」


げげっ。また来客? マジか・・・。あれ? 誰も居ないぞ?


「お客さまですか?」


「あはは、冗談冗談。来客じゃないよ。明日以降の運行スケジュールが更新されたんで知らせに来たんだ。キミは明日は始発担当だよ。」


あー、びっくりした。 そうか、明日は始発運用。じゃ、タマミちゃんも明子おばあちゃんも乗ってくるかな。


「もう、また来客かと思ってビックリしましたよ。で、明日は始発ですか、了解です。」

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