24話 カスティリア中央駅駅長
更に1時間ほど走ると、ついにカスティリア中央の大きなドーム駅舎が見えてきた。
ぷわぁぁぁぁん。
速度を落として警笛を鳴らした。警笛で目が覚めた生徒たちが駅舎を指さしている。
「帰って来たのね!」
「うぁわ、カスティリア中央だ。」
ホーム上には大勢の人たちが居る。出迎えの学校関係者や生徒の家族だろうか。
いつもよりも速度を落として、ゆっくりとホームに入線した。
ホームのみんなが手を振っている。車内の生徒たちも窓を開けて手を振っている。
停車位置には駅長が待っていた。列車を停車させてドアを開ける。
「17号列車、生徒たちを助けてくれてありがとう。ご苦労様だったね。キミはこのまま総合車両点検センターで点検の予定だ。相当無理したんだろうから、しっかりとメンテナンスするように指示してあるよ。傷だらけの車体も塗装して綺麗にしないと・・いや、車両は汚れてはいるけど、傷は無いんだね?」
「はい、実は魔法で車両の増車、減車が出来るようになったので、今の車両は全て増車させた新造車両なんです。」
「そうか!キミは増減車が使えるようになったんだったね。マークプレイン駅長からの報告では、飛んだとも聞いたし、一体キミに何が起きたんだい? まぁ、今は疲れてるだろうから、それはまた、おいおいゆっくりと聞かせてもらうとして、ともかくは総合車両点検センターで点検と休憩を取ってくれ。
「ありがとうございます。でも、一つお願いがあるのですが・・」
「うん?なんだね? 大活躍したキミのお願いなら叶えてあげられるものなら叶えてあげたいと思うが。」
「可能であれば、タマミちゃんをクラクトン・シーまで送り届けたいのです。ボク、出発する時にクラクトン・シーの人たちにも約束したんです、タマミちゃんを連れて帰るって。」
「なるほどな。しかし、キミはキミ自身が思っている以上に疲労していると思うが・・・でも、わかった。少し待っていてくれないか、鉄道管理局と相談してみよう。」
駅長が事務室の方へ行ってしまった。生徒たちは先生たちに呼ばれて、パイプ椅子が並べられた駅の広場に集合している。学校からの指示とかあるんだろうな。
しばらくすると生徒たちが一斉に立ち上がり、一斉に「さようなら!」と言うと、広場から一目散に迎えの家族の元へ飛び出していった。
タマミちゃんはどうしたんだろう?たぶん、ご両親が迎えてに来ているんだろうな。
そこへ駅長が戻って来た。
「鉄道管理局と相談したが、キミの様子をしっかり判断することを条件に私に一任されてしまったよ。」
タマミちゃんがやってきた。
「17号列車さん。あらためて、どうもありがとう。」
「いやいや、ボクらは絆石チームだからね。でも、絆石、割れちゃったから、また作ってもらわないとね。」
駅長が尋ねた。
「貴方がタマミちゃんかな?17号列車の乗客の。」
「はい。タマミです。クラクトン・シーから毎日通学しています。」
「そうですか。今、校長先生に聞きましたが、生徒さん達、今日はもう帰宅して、また来週から登校再開だそうですね。まずはおうちに帰って美味しいものを食べて、ゆっくりと眠って、ですね。ところで、お迎えはどなたが?」
「私の両親は海外で働いていて、もう3年帰って無いの。だから、今日も来てないわ。」
そうだったのか、だから明子おばあちゃんにも懐いていたんだな。
「そうだったんだ。でも、クラクトン・シーで明子おばあちゃんが待ってるよ。絆石のこと話しなきゃね。」
駅長はそれで全てを察したようで、タマミちゃんの肩に手を置いてこう言った。
「タマミちゃん、貴方のお迎えはもうすぐ到着しますよ。クラクトン線のホームで待っていてもらえますか?」
「え?私のお迎え?」
駅長はにこっと笑って大きく頷いた。
「そうですよ、さぁ、ホームで待っていてくださいね。」
タマミちゃんはきょとんとした表情のままクラクトン線のホームへ向かって歩いて行った。
駅長は出発信号機に向かって指示を出した。
「17号列車を一旦引き上げ線へ回送して、クラクトン線のホームへ入線させて下さい。その後、クラクトン・シーまで、臨時の特別急行ダイヤの調整をお願いします。」
うわぁ、ボクがタマミちゃんを送り届けられんだ。
「駅長さん!良いんですか?」
「キミの当初からの目的は、タマミちゃんを迎えに来ることだったからね。ここで終ったら目的達成できないし、タマミちゃんを最後まで送り届けるのはキミであるべきだと思う。お客様の希望でもあるしね。」
出発信号機が呼びかけてきた。
「準備が出来ました。3番の引き上げ線へ入って下さい。その後、来た時と同様、渡り線のポイントを5つ渡ってクラクトン線に入って、そのままホームへ入線して下さい。引き上げ線までの進行を許可します。」
「了解。出発、進行!」
3番の引き上げ線で列車を止めた。
そして、進行方向を変えて、ゆっくりと進む。
ガタン、ゴトン。
大きく揺れながらゆっくりと渡り線のポイントを超えてクラクトン線に入った。ホームには駅長とタマミちゃん、そしてなぜか、多くの生徒たちが立っていた。
ボクの姿を見たタマミちゃんが少しジャンプしながら大きく手を振っている。
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