7話 下り特急列車
「ご乗車ありがとうございました、終点、カスティリア中央、終点、カスティリア中央です。どなた様も、お忘れ物、落とし物などなさらぬようにご注意下さい。」
うん、すごい疲れたけど、めっちゃ気持ち良かったな。特急最高! 特急列車は乗るのも楽しかったけど、自分で走るのはもっと楽しいね、乗り鉄仲間に自慢してやろうか、あ、乗せてやろうかな。ま、この世界に来られなきゃダメなんだけどね。
「お疲れさまでした。折り返しは1時間後、その間車内清掃チームが入るので、先頭車両のドアだけ開けておいて下さいね。」
特急運用の時には、ここでも車内清掃するんだな。ま、ここが終点だけど、次の運用では、ここが始発ってことだもんな。
ボクは先頭車両のドアだけ開いたままにして、少し仮眠を取ることにした。
「17号列車、そろそろ出発準備だよ、ドア開けお願い。」
駅員に起こされてしまった。結構しっかり眠っちゃってたんだな、魔力使ったから疲れてるんだろう。ドア、ドア、と。プシュー、ドアを開いた。
「12番線の列車は特急、クラクトン・シー行き、停車駅はセントブリッジ、クラクトン、終点のクラクトン・シーです。発車までご乗車になってお待ちください。」
ホーム上では、やはり乗客の大きなトランクケースを駅員達が車内に入れる手伝いをしている。大きなドームの頭端式ホーム駅舎で、この光景は、まさに鉄道旅っていう風情があって、ヨーロッパのターミナル駅みたいで素敵だな。ま、前世のボクはヨーロッパまで鉄道乗りに行ったことはないので、テレビの、世界の車窓からですよ、で見ただけなんだけどね。
「そろそろですよ。今日もご安全にお願いしますね。」
駅長がそう声をかけると、列車の中心方向へ向かった。いよいよ出発だな。
「特別急行列車、クラクトン・シー行き、発車致します。ドアが閉まりますのでご注意下さい。」
ピピー。 駅長がが笛を鳴らして、右手を振った。
「17号列車、特急運行につき制限速度開放、100キロ。進行許可。」
ここの出発信号機は相変わらず、フレンドリーさが無いというか、ま、これが都会っぽいスマートってことなのかな。
「出発、進行。制限100!」
普段通りに加速する。感覚的に今が通常の加速完了の60キロかな、速度計を見ると57キロ、ほら、ボクも既に運転感覚が身に着いたぞ。そして、ここからの加速が特急運行の見せ所なんですよー。いきますよー、うぉぉぉぉー。
周囲の音が変わった。カタタタンッ、カタタタンッ、レールのジョイント音も切れのあるリズムを刻んでる。速度計は100キロ。風だ、ボクはまた、風になっていますよ姉さん(興奮しすぎで意味不明)。
次の通過駅はセレスティア、昨日ボクが特急の通過待ちをした駅だ。昨日の特急のように美しい警笛を聞かせてあげよう。
ぷわぁぁぁん。
セントブリッジ駅に停車した。
「セントブリッジ。セントブリッジ。ご乗車ありがとうございました。この列車は特別急行列車のクラクトン・シー行き、停車駅はクラクトン、終点のクラクトン・シーです」
三分の一位の乗客が下車したが、乗車してきた乗客は3人だけだった。
地方都市間の移動の需要はあまり無いのかな。
「特別急行、クラクトン・シー行き、間もなく発車しまーす。」
ドアを閉めて出発信号機の指示を待つ。
「運行残り半分、頑張って行きましょう、制限速度開放、100キロ。進行許可します。」
「了解! 出発、進行!」
うぉぉぉ。やっぱり加速の時が一番魔力を使うんだな。ここを乗り越えれば風になれるんだ、気合いだ気合い。そして、ボクは風になった。(自己陶酔中)
カタタタンッ、カタタタンッ
クラクトン駅に停車した。
「クラクトン。クラクトン。ご乗車ありがとうございました。次の停車駅は終点のクラクトン・シーです」
大半の乗客が下車したが、まだ4人が乗車していた。
「ラスト1区間、最後までご安全にね。制限速度60キロで進行許可です。」
「出発、進行! 制限60!」
終点のクラクトン・シーに戻ってきた。
最後の乗客が下車するのを確認し、ドアを閉め、室内灯を消灯したら、肩の力が抜けた感じがして、どっと疲れが襲ってきた。特急運行、楽しいけど、マジ疲れるわー。
「おつかれさまー。では最後、クラクトン・シー列車区まで、制限速度30キロで進行許可。また明日ね。」
「出発、進行、制限30!」
いやぁ、30キロの回送運転でも疲れるわぁ。もしかして、と魔力計を見ると、あぁ、やっぱり、魔力量が52しか残ってない。たぶん、魔力の出し方が上手じゃないんだろうな。効率よく運行するように練習しないと・・。
車庫場内信号機に指示された6番留置線に停車させた。ふぅ~、ホントに終わった。
疲れた、寝る!
その後の1週間は普通列車の運行担当が続いていた。路線の景色と信号、標識、踏切の位置もほぼ頭に入った。残る課題は魔力の使い方だけど、こればっかりは色々試しみてるけど、魔力を出さなきゃ進まないってことしか解らないんだ。車庫でも考えてるけど、そもそも魔法も魔力もなんだかわかってないんだから考えても無駄なのかもしれないけどね。。
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