エフェクト・バタフライ

 白い蝶を見た。

 モンシロチョウやスジグロシロチョウとは違う。もっとずっと大きくて、ゆったりと羽ばたく蝶だ。


 嘘のように純白の体、輝く鱗粉、ガラスの触覚。

 それは、蝶というより夢のようで、虫というより妖精のようで。

 空を気ままにひらひらと舞う、とても優雅で美しい生き物だった。


 白い蝶が蜜を吸うと、その花は瞬く間に枯れた。白い蝶の鱗粉がかかると、どんな生き物も眠りについた。白い蝶が羽ばたくたびに、視界の隅で竜巻が起きた。


 綺麗な薔薇には棘がある。

 美しさとは、痛みと、恐ろしさと表裏一体だ。


 だから僕はこう思う。

 あのとき見た純白の蝶が、この世界で最も美しい生き物だと。

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