ワームムーンの次の夜

 もちもちと柔らかい、妙な生き物を見た。その生き物は白くて、丸くて、キィと高い声で鳴いて、ペンギンのようにぎこちなく体を揺らして歩く。

 

「お名前は?」

 

 腰をかがめて聞いてみた。

 返事はない。当然か。

 

「どこからきたの?」

 

 キィと鳴く。

 

「僕はね、ずっと向こうからきたの。丘を越えて、ひとりできたんだ」

 

 横にきてちょこんと座るもんだから、僕も腰掛けてそのまま昔話をしてみた。

 

 信じられないだろうけれどね、僕、月で産まれたんだよ。ううん、本当は、そう思いたいだけかもね。でも、だから、月に帰ろうと思って。誰も愛してくれないこんな星にいる時間は、僕には少しだってないんだから。

 

 淡々と話す僕の横で、ソレはただ星を見続ける。

 

「空が好きなの? 僕もだよ」

 

 その日の月は、普段よりすこし綺麗だった。

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