三月七日

「ハタチになったら、掘り返しにこよう」

「約束ね。みんながハタチになったら、ここに来る」

「で、でも……待ち合わせの日を決めなきゃ、会えないんじゃない?」

「あっ、そっか」

「そうだね。じゃあ、今日と同じ日! 三月の七日にしよう!」

 

 もう忘れたと思ってた、古い記憶。今になって思い出すなんて。

 小学校を卒業するとき、仲の良かった友達と埋めたタイムカプセル。二十歳になったらいっしょに掘り返そうね、なんて夢みたいな話をしてた。

 

 あれからもう八年。

 先月の誕生日で私も二十歳になったから、全員が二十歳になったことになる。

 

 今日は、三月六日。

 よりによって今日、思い出しちゃったから。だから、我慢できなかった。

 こぼれる内臓、血の臭い。服にべっとりついた赤色と、しつこい耳鳴り。

 

 私は私の母を殺した。

 

 どうしても行きたかったから。

 死にたくなかったから。

 あの子たちに会いたかったから。

 もう怖いのは嫌だったから。

 痛い思いをしたくなかったから。

 今日が三月六日だったから。

 明日が三月七日だったから。

 私が人間だから。

 

 それだけ。

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