第3話 現実か……。

 自宅に帰ると私の仕事であるご飯の炊き上げを始める。お米を用意してとぎ炊飯器にかける。


 私はヤンデレである、そう時々思うのだが、ご飯を炊くのを私に任せて呪い入りのご飯を作る心配は必要なはずなのに。と、小首を傾げる。更に渋々決まった作業として洗い物の片付けがある。


 さて、おかずはお母さんが仕事帰りにお惣菜を買ってくるのでここで私の出番は終わりだ。


 妹の美知留は高校受験で忙しい。最近の家族は父親も忙しく誰も私の相手をしてくれない。結果、私の趣味である呪いの本を読み漁る事が増えている。たまには恋愛小説でも読もうするが頭が痛くなるので止める。ここで更に紹介するのがサボテンのサボ君である。ダンゴムシ君が学校の友達ならサボ君はペットの立ち位置であった。

サボ君は基本的に手入れが必要無いので楽なペットである。


 母親と妹の三人で夕食である。母親の買ってきた麻婆豆腐を温めて食べる。最近は生活が貧しくなった気がする。子供を二人も大学に進学させる為にはお金がかかるらしい。私はバカだから三流大学しか行けないので辞退しても良いが、そこは親心で進学させたいらしい。


 食後に洗い物をしていると普通に鼻歌が出る。


「♪~~♪」

「げ、お姉ちゃんが明るい」


 そうか、やはり、純様と付き合う事になったのが自然とプラスに働いているのか。


「私はね、王子様の恋人に成れたの」

「げげげ、ありえない。ロマンス詐欺だよ」


 失礼な純様を詐欺師扱いして。


「確かにお姉ちゃんは見た目が良いから、騙されているのはその王子様の方か……」


 妹がなんと言おうと、この幸せは揺るがないのだ。さて、テレビもつまらないし寝るか。自室に戻るとサボ君におやすみを言ってベッドの中に入る。


 そう言えば、純様とのメッセージアプリの交換がまだだった。明日、頼んでみるか。


 朝、寝ぐせを直していると。何か忘れている感じがする。確か純様と恋人同士になったのだ。イヤイヤ、私が有りえないと結論を出すと。


「お姉ちゃん、電車に遅れるよ」


 部屋の外から妹の美知留が声をかけてくる。おっと、これは不味い、純様こと王子様の観察する時間が失われてしまう。でも、純様との恋人同士の記憶が残っているのは何故だろう?


 私は頭をポリポリしながら部屋を出る。


「あれ?何時ものお姉ちゃんだ」

「昨日、おかしなことがあったんか?」


 私の問いに黙る美知留であった。おい、大丈夫なのかと、もう一度聞くと。


「お姉ちゃんは王子様と恋人に成ったと自慢していたよ」


 グルグルと記憶を回すとやはり本当であったか。かーっと顔が熱くなる。私に王子様の為に化粧をしろと申すか?


「お姉ちゃん大丈夫?呪いにしか興味がないお姉ちゃんには無理だよ」


 色付きリップすら持っていない私に王子様が惚れたのだ???


 ここは整理しよう。先ず、王子様こと純様と一緒の体育祭の委員になって、呪いのポーチを届けてくれて、そこからダンゴムシ君がどうのこうので惚れていて。「俺がいなきゃダメだ」と愛の告白をされたのだ。その後、一緒に電車で帰ったのだ。


 はぁ~……。


 どうしよ、私が純様と歩いていたら石が投げられる。純様と付き合う事の事態の深刻さに気付くのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る