第2話 どうせ、ヤンデレですよ。

 教室の中で落ち着くと私は純様と話した余韻に浸っていた。あー純様カッコイイかったな。


 さて、帰るか。あれ?何か足りない。そうか、呪いに使うわら人形セットの入ったポーチが無いのだ。


 何処に落としたかな?


 ま、呪い使うわら人形だ、誰も欲しがらないはずだ。教室の前でそんな事を考えていると……。


 純様が現れて声をかけてくる。


「三河さん。これ、忘れ物だよ」


 それは無くしたポーチであった。げ、呪いのわら人形の入ったポーチである。


「中身見た?」

「そんなことはしないよ」


 ふう~純様に見られては困る物であるから少し安心した。


「そんなに大事な物なの?中身は何?」


 ひーそれは聞かない約束なのに。


「生理セットです」


 私は適当に嘘を返すと……。純様は顔が赤くなり、さっと、ポーチを渡してくる。王子様も女子のたしなみには弱いのかと感心する。

私がオロオロしている純様を見ていると。


「おっと、少し動揺したが、ここは本題の話をするね」

「はい」

「三河さんは南南線だったよね。俺も同じなのだ。良かったら一緒に帰らないか?」


 えぇぇぇ!!!驚く私はブンブンと顔を振って断ろうとすると……。


「難しいお願いだとは思っている、でも、自分の気持ちに素直になりたいくて」


『きゃは』私は変な所から声が漏れた、これは恋の予感がする。


「良かった、嬉しそうだ」


 どうやら、私の顔はデレているらしい。それはヤンデレの初恋の始まりであった。


***


 私と純様は帰りの電車内に居た。あーうー、会話が続かない。ここで必要なのはコミュニケーション能力だ。しかし、私はコミ障害である。


 長い沈黙の後で、何故、私と一緒に居たいか純様に問うてみる。


「俺、見たのだ、和穂が昼休みに校舎の南側でダンゴムシに話かけているところを」


 はい?いつの間にか下の名前の『和穂』になっているし。イヤ、今は名前を問題視している訳にはいかない。ダンゴムシ君が私の親友であることだ。


「ダ、ダ、ダンゴムシ君は私の親友よ」


 私は本音をラフな感じで語る。これなら普通に思われるはずだ。


「やっぱり、俺が居なくちゃダメだなと思った通りだ」


 そんな同情目線で和穂と呼んでくれるの?贅沢はダメだ、私は王子様と愛し合えるのだ。


 やがて三十分が経ち、純様が下りる駅が近づいてきた。この二人だけの時間は簡単に過ぎていく。電車内の中なので正確には二人だけではないがそこは気にしない。ここで確認しておきたい事はダンゴムシ君との友情を守ることだ。


「ダンゴムシ君は大人しくて本当にいい人達なの、だから、この友情を引き裂かないで」


 純様は腕を組んで考え込む。そんなに難しい事なのか?ただ、ダンゴムシ君が友達なだけなのに……。


「わかった、ダンゴムシが友達でも俺の愛は変わらない」


 ボン!!!


 気軽に恥ずかしい事を言うな。私は顔を真っ赤にして照れる。この瞬間湯沸かし器になった気分に浸っていると、純様の降りる駅に着く。


 別れ際に手のひらが触れ合ったと思うとドアが閉まる。


 純様……。


 ここで本当に長い一日が終わるのであった。

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