王子様とヤンデレ娘の恋

霜花 桔梗

第1話 そして恋が始まる。

 私は今、清里学園に電車通学の最中であった。清里学園の最寄り駅から五つ前、時間にして到着三十分前の駅に電車が止まる。車両のドアが全て開くと二両目にある真ん中のドアから王子様が乗車してくる。


 毎朝、王子様は必ず二両目の真ん中のドアから乗車するのであった。ああぁ、こして遠くから眺めているだけで幸せだ。


 それは王子様こと『長谷川 純』様である。彼の成績は学年で五本の指に入り。それでいてバスケ部のキャプテンだ。文武両道、顔はイケメン。ファンクラブあり。


 私こと『三河 和穂』はこうして遠くから眺めるしか無いのである。おや、純様が何かを取り出した。単語帳である。そう私は知っている。純様は努力家なのだ。そんなことをしていると電車が清里学園の最寄り駅に着く。私は息を殺して純様から、そっと距離を取る。

あああぁぁ見つかってはいけない。


 それから、昇降口まで付いてきた。この距離からの観察は止められないな。落ち着いた表情に綺麗な髪、バスケ部だけに身長も高い。ホント、純様は今日もカッコイイ。


 したしたと後を付いて行くと危うく隣のクラスまで入ってしまいそうになる。私と純様は同じ学年だがクラスが隣と中途半端な関係なのだ。


 その後のホームルームの事である。私は秋の体育祭の実行委員のくじで大当たりしていた。確率はクラス全体の中で一人である。普通当たるか?


 しかし、仕事は簡単、クラスを代表して会議に出るだけである。

本当に簡単なのか?と、小首を傾げる。渋々、放課後、小会議室に向かう。


 そこに居たのは、純様であった。なんでも自分から進んで立候補したらしい。近くで感じる純様のオーラは輝いていた。それはファンクラブもできるわな。


 あーあああ、私も壁ドンされたい。


 などと、無言で頼むが通じない。アホか、通じたら怖いわ。そんな事をしていると。


「君が12ホームの代表だね、俺は11ホームの長谷川です」

「あ、あ、三河です」


 ひー!!!!


 純様と話した。


 これはくじ引きで運を使い切った。きっと、明日、雷に打たれて死ぬに違いない。


「三河さん、なんだか顔が赤いよ」


 ああああああ、バレてしまう、私が純様に恋をしている事がバレてしまう。


「茹でダコのモノ真似です」

「三河さんって面白いね、恋に落ちたらゴメンね」


 王子様、これ以上からかわないで、私の心がメルトダウンしてしまう。私がモジモジと椅子に座り、頬を赤らめていると、会議が始まる。普通に議長が純様になっているのも不思議でなかった。三十分ほどの会議終盤で。「次回は二週間後です」と純様が言うと会議は終わる。


 私は走る恋心に我慢が出来なくなり。小会議室から逃げ出す。教室に戻ると大きく深呼吸をして落ち着くのであった。

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