第2話 唇を尖らして。次に、顎を引いて。
顔色を赤く青く変えながら、男子を見上げる
(……正面から見たら、もっとカッコイイ。こんな人、彼女さんがいるの当たり前だよ。でも、私……私……)
自分が、思った以上にダメージを受けている事に気付いて、華は
知らず、夢を見ていた自分に愕然とした。
●
いつか。
いつか、もしかしたら。
本屋で出会ううちに、挨拶をするようになったり。
いつしか、世間話をするようになったり。
連絡先を教えて、電話やチャットで話したり。
並んで、歩いたりして。
そんな『もしも』を心で思い描いてはいなかったか。
その先にある、未来も。
華は自分の夢見加減に唇を噛んだ。
そして。
自分の恋が終わってしまった事を感じとった華は、こんなに好きだったんだ、と気付いてしまった。
何一つ、できないままに。
気持ちだけが。
好きだという気持ちだけが。
どうしようもなく、ここにある。
ダッフルコートの胸元を、ぎゅう!っと握りしめた華は、チャラ寄りのチャラ男子、
●
「顔色悪かったけど……大丈夫?具合、悪いの?飲み物とか、いる?」
華と向かい合い、遠慮がちに心配そうに様子を伺いながら話しかけた隆太。
ふるふると首を振った華は。
とて。
とて。
隆太に向かって歩き出した。
ゆっくりと。
大切なモノを噛み締めるように。
隆太の足元を見ながら、進む。
一歩。
また、一歩。
少しだけ躊躇いつつも、もう一歩。
「あ、え?あの……どうしたの?えっと……」
問いかけと同時に、華は小さい
隆太は、大きく手を伸ばせば触れられるまでに近づいた華に焦りまくる。
(目の前まで近づいてきた?!お、俺、どうしたら。いや待て、落ち着け)
予想外の展開に、どう反応していいかわからずに立ちすくんでいると、俯いている華の唇が動いた。
赤い、色鮮やかな薄めの唇が尖った。
" す "
すぐに、
" き "
ひと言も喋らずに、華はニッコリ!と顔を上げた。
だが。
その可憐な笑顔に高鳴る胸を押さえつつも、『聞き逃した!』と勘違いをした隆太は慌てて聞き返した。
「今、
そして、絶句した。
にっこりと笑顔を浮かべた華の目元から、涙が零れ落ちたのだ。
●
「…………!!!」
「ま、待って!」
慌てて背中を向けて階段へと駈けだす華と、後を追った隆太。
ここでも華は、予想外の動きを見せる。
階下の出口へと向かわずに、上りの階段を目指して走っていく。
「ちょっと待って!ねえってば!」
「…………!きゃ?!」
止まってもらおうと手を伸ばす隆太の前で、涙で歪んだ視界を手で
「きゃああ!!」
「うおおおおお!!!」
華のピンチに、隆太は必死で手を伸ばした。
【続く】
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