あと1日
まずは、お誕生日おめでとう。
前話と今回のお話との間には、実質2日分が詰まっています。
すぐ生まれるか?と予想された昨日に分娩はなく、日付は変わって今日の午前2時半、
「15分おきに腰まで割と痛い」
という私の訴えで事態は急展開しました。
陣痛の第1段階、とあとで呼ばれたものが始まりました。
モニターをつけて計ってみれば、15分おきではなく7分おき。
それが2分おきに変わるまでに時間はかからず、まだ君の頭がそこまで下になかったことから、午前4時からの帝王切開がはじまりました。
手術室には米津玄師のLemonとアイネクライネがかかっていました。
「生まれてきた その瞬間に私」
「消えてしまいたいって 泣きわめいたんだ」
この歌詞が頭をよぎりましたが、先生たちはとても優しく、
麻酔の注射が痛いと言おうとして、「終わりましたよ」と声をかけられました。
君の性別と、無事生まれたことを聞いて、起こしていた痙攣を止めるためのお薬でちょっと朦朧としながら、おとーにゃんに電話で報告していました。
おとーにゃんは間に合いませんでした。
おとーにゃんが用事を済ませてすぐ駆けつける予定を立てて寝たところで、君の手術が決まりました。
おとーにゃんが起きたときには「生まれといたで」のサプライズ。
せっかちなところは2人ともに似て、ゴーイングマイウェイなところはおとーにゃんに似て、サプライズ好きなところは私に似たのだろうと笑って泣きながら話していました。
君の実情を知るまでは。
あまりに君の状態も面会のルールもわからず、手術に立ち会えた母に電話すると、君はけっこう大変だとわかりました。
仮死状態で生まれてきたんですね。
蘇生術で生き返ったんですね。
まだ全身麻酔のせいなのか私の病気による障害なのかわからないんですね。
筋緊張が低い、と聞いて、全身付随時代を思い出しました。
元気に産んであげられなくてごめん、と、君とおとーにゃんに謝っていました。
でも君は、生きてくれたんだね。
私もおとーにゃんも間に合わなかったから、君から迎えに来てくれたんだね。
ありがとう。
生まれてきてくれて、ありがとう。
母が撮ってくれた動画のなかで、君は手足を弱々しく動かしながら、一生懸命泣いていました。
それを何度も何度も観て、見て、泣きました。
よく頑張ったね。
髪はやっぱり、どちらにも似たんだね。
ふさふさだったよ。
私に白髪が増えるわけです。
おとーにゃんなら面会できることがわかり、予定をぶっちしておとーにゃんは駆けつけてくれました。
今、ちょうど君のお話を聞いて、同意書やらにサインして、君のお顔を見に行っている頃でしょう。
私も会いたかったのですが、手術当日にはベッド上安静というルールがあるらしく、どちらにも会いに行けませんでした。
ちょっとどころじゃなく寂しいです。
君のいないお腹が痛むのが悔しいです。
お腹だけじゃなく全身に力が入らないのが悔しいです。
同じく筋緊張の低い君は頑張っているんだろうなと思うと不甲斐ないです。
今のところ、体調次第では明日の夕方くらいに君に会えるそうです。
おとーにゃんは何百キロを瞬間判断して駆けつけました。
数十メートルの私が負けるわけにはいきません。
後陣痛とやらがうるさいですが、絶対に整えて会いに行きます。
ちょっと待って、を君は全然聞いてくれなかったけど、お願い、ちょっと待って。
明日には、会いに行くから。
君と会えるまで、あと1日。
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