名のない君へ捧ぐ

あと28日

28は7で割り切れるから、君と会えるまできっちり4週間。

…のはずなのに、予定では、4週間後には君は生後1日になっている…手術当日のはずなのに…。

君のおかーにゃ――つまり私――は、理系のくせに日にちを数えるのが苦手です。

何歳が何年生にあたるのかもわからないし、昭和、平成、令和の読み替えもいつもグーグル先生頼りです。

そういえば君は令和の子なんだね。

平成が何年まで続いたのか覚えられない私にはとても新鮮に感じます。

今日は君の好きな畑に行きました。

君がいつもより控えめだったのは、普段よりも日光が少なかったからでしょうか。

それともクローバー刈りで私がかがんだからでしょうか。

白菜が菜の花になって笑った君は、咲き誇る菜の花を見てもあまりテンションは上がっていなかったように感じます。

あれはそのうちてんぷらになるだろうから、おなかに届くのを楽しみにしていてください。

今日の君はおとーにゃんが朝、君のニックネームを何度も叫んだところがピークでした。

両腕両足をバタバタ動かして、走っているのか泳いでいるのかさっぱりなレベルにお元気でした。

そのあとは、お薬の濃度が高かったせいかもしれません。

私も半分朦朧としていたので、君のテンションを低く感じたのはそのせいかな。

ごめんなさい、まだお薬の調整がうまくいっていないのです。

入院には間に合わせるね。

今日は君のおじいちゃんにあたる人やひいおじいちゃんにあたる人の話をしていました。

ひいおじいちゃんは、私の誕生を楽しみにして余命を覆して生還し、小さい頃の私のお世話をしてくれていた人です。

他人の悪口なんて絶対に言わなくて、ずっとニコニコ笑っている人です。

残念ながら、今はボケています。

認知症が進んで、私のこともあまり覚えていません。

私が3歳くらいまでのことなら覚えていて、いつも思い出話をニコニコとしてくれます。

料理人として尊敬していましたが、もう味覚がおかしくなっていて頼れません。

君にひいおじいちゃんの餃子を食べてみてほしかった。

生まれてから一度は会いに行こうと思っているから、楽しみにしていてね。

きっとひいおじいちゃんも喜んでくれるから。

…その次に会うときには忘れているんだろうけど。

でもずっと笑顔な人だから、優しい人だから、大丈夫だと思います。

そういえば私はひいおじいちゃんにひらがなを教えてもらいました。

今こうして日本語が書けるのも、ひいおじいちゃんのおかげです。

君が喜ぶ小説を私が読み書きできるのは、ひいおじいちゃんのおかげです。

だから、君もそんなひいおじいちゃんに愛されてほしいなと思います。

今日は入院に備えて髪を切りました。

美容師さんが「おなかが前に出てるけど、男の子？」と君の話題を振ってくれたときから君はたいへんご機嫌になりましたね。

君は褒められるのと話しかけられるのが大好きなようです。

かわいらしい。

そのままのびのび育ってほしい、と言わなくても君はしなやかに育つのでしょう。

それがとても楽しみです。

じゃあ、また明日。

君と会えるまで、あと28日。