自分のお気に入りの本屋。

行進12番

自分のお気に入りの本屋。

               ――起――

 昔の思い出を語ろうかと思います。あれはまだ私が別の仕事をしていた時です。


 漫画を読んだり集めたりするのが趣味だった私は、一番家から近い本屋を利用しておりました。

 ただひとつ問題がございまして、欲しい漫画が発売中のはずなのに入荷していなかったり、入荷部数が少なくて売り切れていたりというのがしょっちゅうでござんした。で、『売っていなかったらどうするか?』っていうと、一番近い別の本屋に探しにいくわけでございますな。

 それで嗚呼、「売っていてよかった~」なんて一安心することもあれば、探しても見つからず……、結局、一番近いお店で取り寄せの注文をしたりしておりました。

 というのも、近くの本屋は『漫画を置いているスペースが狭い』といった原因があり、『人気のある漫画しか基本的に取り扱っていない』というのが現状でございました。

               ――承――

 そんなある日、仕事終わりに立ち寄ったとある本屋(Aとします)。新規オープンという事で足を運んだわけでございます。

 店内をうろうろと散策し、「ふーん。新規なだけあって中々綺麗なお店じゃないか」と散策していると、お目当ての漫画コーナーを発見。


 その時の私はきっと宝物を見つけた少年のような顔をしていた事でしょう。


「なんだ……これ……なんだ……? この、置いていある漫画の種類の数は……?」


 それはもうビックリしましたね。当時、まだ主流ではない異世界系※を集めた漫画も取り扱っており、見た事も無いような漫画がそれはもうあちらこちらに。


 ※(個人的な見解です)


 とりわけ凄かったのが、新刊の漫画が置いてあるスペース。それだけで5つの山で形成されておりまして、一番手前が週間少年系、すぐ横に行くと月間系、はたまたこんどは青年系の週刊新刊、月間新刊と、少女漫画だけの特別スペースなど、全てが客のニーズにあうように置いてあるではありませんか。


 嗚呼、口惜しや、777文字ピッタリ書きたいのに、語りたい事が777文字で収まらぬ。(メタ発言謝罪)


 ええい、そんなことはどうでもよい。


 で、しばらくはその本屋Aの虜になってしまい、仕事終わりや、仕事が休みの日でも、それはもうそれはもう通い詰めるようになりもうした。


 当時ではまだ珍しい、ポイントカード制度というのもコレが客を喜ばせておりました。1ポイント1円として貯めたポイントを使う事ができ、100ポイントも溜まれば100円引き、さらに毎週火曜日(だったはず)、その日限定で50ポイントが付与され、新刊の漫画、雑誌、関わらず50円引きで本が買えるというメチャクチャお得なものでございました。


 んま~~増える増える。時が経つごとに本が増える。


 本棚に入りきらず、床置きをし、新たに本棚を買ってきては本棚が埋まり、また床に置く。そんな数年間でございましたな。


               ――転――

 しかし時が経つと、似たように『漫画コーナーを重視する本屋が増えてきた』こともあり、売り上げが伸び悩むのか、ついにその本屋Aは閉店することに。まぁそれだけが原因ではないのでしょうし、割愛いたしますが。


 自分のお気に入りのお店ができたと思ったのに、無くなったこの焦燥感……。


 ……。


 ということもなく、実はそのまま別の本屋(Bとします)がオープン。お店の店員も据え置きで、見た事ある店員がそのまま働いておりました。勿論の事、お気に入りの漫画コーナーも、そのままの形で継続されておりました。(本来ならば、経営が変われば店内のレイアウトもガラっと変わったりするのですが)


 ただ、ポイントカード制度が無い本屋だったので、その店に固執して本を買う必要がなく、出先で新刊が出ていればその場で購入する生活スタイルになってしまいました。

               ――結――

 いえ、勿論その本屋Bはたまに利用したりするんですけどね。依然として、取り扱っている種類が豊富なこともあり、発売日に自分の欲しい漫画が買える喜びに勝るものはないでしょう。


 と、まぁ……。今ではネットで購入するのが当たりまえの時代でございますが、本屋巡りをしていたひとりの顧客の呟きでござんした。


 ここまでお読み頂きありがとうございました。引き続き読者様におかれましては、カクヨムマラソンをお楽しみくださいませ。


 執筆者:行進12番より。

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自分のお気に入りの本屋。 行進12番 @march_no_shousetu

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