リハビリ第三段階、リハビリ室へ

手術から二週間ほどが経ち、歩行器で歩くのもだいぶ楽になっていた。

「今日はリハビリ室に行きますね、マスクしてください」佐々野さんがいきなりそう言いだした。「マスクはありますが・・・」私はマスクを引き出しから出した。

「歩行器のままエレベーターで降りるから」と佐々野さんが言う。「大丈夫なんですか?」エレベーターが苦手な私はそう答えた。「大丈夫よ、私が一緒だし」と佐々野さんが言い、歩行器によりそようにしてエレベーターで二階に降りた。

エレベーター前がリハビリ室になっていて、かなり広くいろいろなトレーニングの機器がおいてあった。

そこで見たのは色々な障害がある人たち。車いすのままの人。杖の人、松葉杖の人。等々、そして一人一人に理学療法士がついて、指導をしていた。


「ここにしましょう」と佐々野さんが言ったのはベッドぐらいの高さの2畳ぐらいある机上の台。「歩行器から縁に座って、左足の補助具を取って台に上がる」私は言われたとおり上がって足を延ばした、「次は右足を上げるようにして体を回してうつぶせになって」と佐々野さん。少し難しかったがどうにか身体を回してうつぶせになり、枕に頭を乗せられた。

「そのまましててね。力を抜いて」と佐々野さんは言い、マッサージを始めた。私はうつぶせになること自体が久しぶり。足に力を入れないようにしたが、体を支えるために腕には力が入ってしまった。「腕の力も抜いて、大丈夫だから」と言われどうにか腕の力を抜いた。

マッサージが終わると「さっきとは逆の動きで仰向けになって」との指示。私が体を少しずらし、左ひざを曲げ腕で体を支えながら仰向けになった。

「膝を曲げて、木村さんの場合右足を内側に入れると人工関節が外れやすいの。だから外側に動かす動きを使って体の向きを変えてね。それから、右腰を下にして長く圧迫しないように。それと転ばない。これだけは注意して」と佐々野さんは言った。

その後、色々な動きで体を動かした。ボールを使ったり、クッションを挟んだり、チューブを使ったり。動き自体は難しくなかったが、しばらく動かしていないのでかなりきつかった。

「さて、起き上がって、左足の補助具を付けて」と佐々野さんに言われ、私は起き上がり補助具を付け靴を履いた。

「あっちに行くよ」歩行器で向かったのは平行なバーが設置されているところ。

「歩行器からバーに移って歩いてみて」佐々野さんの指示でバーに移った私はゆっくりと歩き始めた。両手に力を入れなくても足で歩く感触。バーの端まで行くと「Uターンして戻ってきて」と佐々野さんが言う。私は言われた通りUターンして元に戻った。「かなり歩けるね、後2往復ぐらいしましょうか」と言われた私はUターンして歩き始めた。2往復が終わると「今日はこれくらいにしましょう。病室に帰るよ」佐々野さんは言って、私はバーから歩行器に移りリハビリ室を後にした。

エレベーターから降りると、病室までそのまま歩行器で歩く。病室に入り、ベッドに座って今日のリハビリは終了となった。

「ずいぶんしっかり歩けるようになったから、歩行器を借りて自分で歩行練習していいよ。看護師に言っておくから、出来そうなときコールで呼んで歩行器を持ってきてもらってね。お疲れさまでした」と佐々野さんが言ったので、「ありがとうございました」と私は返した。

自分で歩行練習ができる。それはとても魅力的だ。体がだいぶ動くようになるとどうやって時間をつぶすかが問題になってくる。相変わらず夜中もうるさいし、少しでも一人で動けるのは、ストレス解消になるかも。佐々野さんの提案はありがたかった。




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