リハビリ 第二段階

翌日いつものように石井さんが車いすを押して病室にやって来た。

そして「自分の力で車いすに移ってみて」と言う。私は左足と両腕に力をこめ車いすに一人で移った。

「よく出来ました。これならトイレも自力で出来そうね」と石井さんは言い車いすを押して病室を出た。

石井さんは廊下のソファーのところまで行くと「今度はゆっくりソファーに座って」と言う。私はゆっくりソファーに移動した。

「ちょっと待っててね」と石井さんは車いすを押して廊下を歩き、帰ってきた時は別の補助機器を持ってきていた。「これは、歩行器。補助するから端っこを握ってゆっくり立ちあがって、立ちあがったら前にもたれていいから」と言う。私は両手を伸ばして歩行器の先に手を置き左足と両手の力で立ちあがりすぐ前にもたれかかった。

「上手上手、さ、ゆっくり歩くよ」と石井さんに言われ、私は歩行器にもたれたまま歩き始めた。だが、右足に力が入らない。どうしても真っすぐ歩けない。時間はかかったが廊下の端までたどり着いた。「Uターン」と言われ左足の力でどうにか回った。「少し、呼吸を整えたらさっきのソファーまで歩いて」と石井さんが言う。

私は少し落ち着くと歩き始めた。ソファーに着くと「ゆっくりと座って右手をソファーにつけてね」と言われた。言われたとおりにしてどうにか座ったが、一往復だけでかなり疲れてしまった。

「座るとき立つときは、右足に負担がかからないように注意してゆっくりと。最初にしてはよく歩けたし、この分だとリハビリも早く進むかもね」と石井さんは言った。

「さ、落ち着いたらもう一回行きましょう」と言われ私は立ち上がり結局それから2往復廊下を歩いた。

「それじゃ今日のリハビリは終わり、そのまま部屋に帰りましょうか」と言われて自分の病室まで歩行器で帰った。そしてゆっくりとベッドに座った。

「今ぐらい動ければトイレは自分でして、終わってからコールすればいいよ。看護師の方のそう言っておくから」と石井さんは言い病室を歩行器を押しながら出て行った


トイレが自分でしていいと言われたのは嬉しかった。ポータブルのトイレも初めてだったし後始末してもらうのも、拭いてもらうのも気恥ずかしかったから。病室のトイレを使ってよくなるまでの辛抱。リハビリ頑張ろう。と私は思った。


このころになるとかなり昼間起きていられるようになった。娘に持ってきてもらったクイズの本のクイズを解いたり、ラジオを聞いたりしていたし、かなり体はベットの上だが動くようになっていた。


手術のあと看護師から『椅子の生活になるし、床のものを取るのも難しいだろうね』と言われていた。私は基本畳の生活。元の生活を取りものどすのはかなり困難だと聞かされていた。でも私は悲観していなかった。関節リュウマチの痛みのひどい時はそれこそ動くのすらままならないこともあったがそれを克服したから。今度も絶対動けるようになってやる。リハビリ頑張ろうと決意した。

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